聞き手/田中 太郎(日経ESG編集長)

アルコールを扱う企業だからこそ、社会課題に向きあう姿勢や取り組みを明確にする。自然との関わりや商品開発などの知見を生かして、新しい価値の創造にも取り組む。

――アサヒグループは2019年から新しい理念を施行しています。方針の狙いと事業会社アサヒビールにおけるESGやSDGsの取り組みについて教えてください。

塩澤 賢一(しおざわ・けんいち)
アサヒビール 代表取締役社長
1958年東京都生まれ。81年慶應義塾大学商学部卒業、アサヒビール入社。営業職を経て、2006年大阪支社長、11年執行役員営業戦略部長、13年取締役兼執行役員経営企画本部長、15年常務取締役兼常務執行役員営業本部長、17年アサヒブループ食品取締役副社長、19年3月より現職(写真:村田 和聡)

塩澤 賢一 氏(以下、敬称略) 新グループ理念「アサヒグループ・フィロソフィー」を策定するに当たり、当社の活動がステークホルダーに与えるポジティブ、ネガティブ両面の影響を捉え直しました。環境、人権・人材マネジメント、責任ある事業活動におけるネガティブな事柄は徹底的に排除し、ポジティブな側面については、アサヒの強みをいかした価値創造という4つの重点テーマを定めて取り組んでいます。

 そもそも当社は自然の恵みをいただきながらビジネスを展開しています。地球環境が保たれなければ麦も収穫できず、水も得られず、事業が成り立ちません。サステナビリティを重視する考え方がいつも根幹にあると言えます。

――環境を優先順位の上位に掲げていますが、具体的な取り組みを教えてください。

塩澤 50年までに事業活動から排出する温室効果ガスを実質ゼロにする「アサヒカーボンゼロ」という目標を掲げています。ビール容器のリサイクルに関しても、瓶はほぼ100%実施していますし、アルミ缶の回収率も高くなっています。また、19年には植物繊維でできた「森のタンブラー」をパナソニックと共同開発しました。プラスチックの削減を目指したエコカップとして、ビールのイベントやスポーツ競技場で販売しました。家に持ち帰れば洗って何度も使うことができます。

■ アサヒグループが取り組む4つの重点領域と重点テーマ
図版:アサヒビール
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――「森のタンブラー」は木のぬくもりを感じさせるデザインが素敵ですね。

パナソニックと共同開発した「森のタンブラー」(画像提供:アサヒビール)
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塩澤 プラスチック代替というだけでなく、容器自体に価値を感じてもらうことができれば、さらに広げていくことができるでしょう。内側に細かい凹凸があり、ビールの泡立ちが良くなったのは面白い発見でした。「森のタンブラー」の普及には、持続可能な事業にしていくための時間が必要ですが、社会へのメッセージとしても大きなインパクトがあると考えています。

 新たに、社有林「アサヒの森」の間伐材や、アサヒビールモルトの焙煎大麦カスを原料に使用することも決まり、さらなる展開を期待しています。