水資源を100%還元

――水資源について、明確な目標を定めています。

塩澤 ビールの製造は大量の水を必要とします。そこで国内工場で使用する水の量と、森で蓄える水資源の量を同じにする「ウォーターニュートラル」を25年までに達成します。使用する水を100%還元するという考え方です。

 ビール工場では水の使用効率を高めて量を減らす一方で、広島県にある「アサヒの森」の森林保全を図り、水を育み蓄える力を守っていきます。「アサヒの森」は第2次世界大戦中、ビールビンの王冠の裏地として使っていたコルクの輸入が途絶えた時の代用品として、アベマキの樹皮を確保するため購入したものです。アベマキの木が生息する区域を選んで買い求めた森林総面積は、東京ドーム約463個分に相当します。水源確保の役割が認められ、広島県から「水源かん養保安林」の指定も受けています。

――ビールの生産過程で「グリーン電力」を使用しています。

『アサヒスーパードライ』(缶500ml)の缶体には、グリーン電力活用による製品を示す「グリーン・エネルギー・マーク」を記載(画像提供:アサヒビール)
[クリックすると拡大した画像が開きます]

塩澤 09年から「アサヒスーパードライ」の350ml缶とギフトセットは、CO2を排出しない自然エネルギーである「グリーン電力」(再生可能エネルギー)で賄ってきました。20年からは「アサヒドライゼロ」や「アサヒスーパードライ」500ml缶にも広げています。それぞれの缶に「グリーン・エネルギー・マーク」が入っていますが、一般にあまり知られていないので、多くの方にグリーン電力について認識してもらえたらと思っています。

――気候変動問題について、事業面での影響はありますか。

塩澤 夏、暑すぎるとビールの売れ行きにマイナスの影響が出ます。適度な暑さは追い風ですが、35℃を超えると昼間に大量の水分を必要とし、夜にはビールを飲む体力がなくなり消費量が減ると推測されます。

 こうした夏場の天候不順に加え、少子高齢化やお客様の嗜好の多様化などからビール市場は厳しい状況です。つまり、従来の商品のまま何もせずにいれば、ビールの消費量は自然に減っていくことが目に見えています。しかし若者に訴求する商品として、苦味を抑え、バーなどでビンのままかっこよく飲むことができる「スーパードライ ザ・クール」を19年に発売したところ、売れ行きが好調なように、価値が認められるような商品に磨き上げる努力をすれば受け入れられる。そのなかで、当社の環境や社会課題の解決に向けた取り組みを知ってもらうことも必要でしょう。商品にいかに付加価値を加えられるかが今後ますます大切になっていくという認識を強く持っています。

アルコール適正飲酒を考える

――飲酒に関するアルコールの功罪についてはどう対処していますか。

塩澤 人とのつながりを結びつけるアルコールの力は大きいと思います。しかしその一方、過度なアルコール摂取は健康を害する恐れがあります。アルコールの適正量摂取への啓発は様々なかたちで行っています。単にお客様に対して「適正な量」をアピールするだけではなくて、メーカー側としてできることがあるのではないか模索し続けています。例えば、アルコール度数が低いビールを新商品として開発するといった取り組みです。

 アルコール関連問題の研究事例などを学ぶ社員教育、飲酒運転ストップのための飲食店向け啓発活動、未成年の飲酒や妊産婦の飲酒防止のための啓発活動に関してはすでに効果が出ています。

――飲み放題など、アルコールに関して寛容な日本の環境もありますね。

塩澤 お店の側も飲み放題でたくさん飲むことを推奨しているわけではなく、会計の明瞭さや人件費削減など、オペレーションがしやすいという利点があります。世界的には珍しい仕組みですが、飲み放題だから飲酒量が特別増えるわけではないようです。とはいえアルコールの摂り過ぎは身体へ悪影響を及ぼすこともあります。以前はビールのテレビコマーシャルで喉元をアップにし、喉を鳴らして飲む場面がありましたが、アルコールを控えなければならない方へ配慮して、業界では自主規制をして取りやめました。