副産物を農業資材に

――プラスの側面をお伺いします。ビールの製造過程で出た副産物を農業資材として有効活用させる仕組みをつくっていますね。

「ビール製造の知見を生かす」(写真:村田 和聡)

塩澤 ビール酵母細胞壁を用いた肥料ですね。ビール醸造でできる副産物は酵母エキスと細胞壁に分かれますが、酵母エキスは調味料として人気があります。残った細胞壁はもともと処理に困っていたのですが、加工して肥料として使うと植物の根を生やす力が強まることが分かりました。甲子園のグラウンド、ゴルフ場などの芝にも使われており、高い評価を得ています。

――大麦の栽培で東北の復興支援をする「希望の大麦プロジェクト」について教えてください。

塩澤 大麦の製造を通じ、被災地に「なりわい」と「にぎわい」を生みだすプロジェクトです。被災地の応援のために単に寄付をするのではなく、このプロジェクトでは現地で大麦を栽培しビールを作って販売するという好循環ができています。

 宮城県東松山市沿岸では、津波で被災した土地の活用が課題となっていました。14年から試験栽培をスタートし、ビール製造の知見を生かして、大麦栽培が可能となりました。東松島みらい都市機構(HOPE)と連携した栽培は、当初の1.2tから、現在は54tの収穫量に増えました。収穫した大麦は地元の人たちとアイデアを出し合いながら、地ビールやお菓子、麦茶に商品化しています。

■ ビール製造の知見を生かした、農業資材や東北復興支援などの取り組み
「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材(肥料)は、阪神甲子園球場のグラウンドの天然芝に用いられるなど、各地のゴルフ場でも活用されている
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『希望の大麦エール2020』、3月6日からアサヒビール直営店18店で数量限定販売
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希望の大麦を初めて「スーパードライ」の原料に使用、4月28日から東北3県限定発売
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(画像提供:アサヒビール)

多様性尊重の社員教育

――重点課題として人材マネジメントも挙げていましたが、具体的な取り組みを教えてください。

塩澤 能力や適性を十分にいかして、誰もがいきいきと働けることを目標としています。結果的に当社の持続的成長にもつながるからです。多様性の尊重が重要と捉え、例えばLGBTの正しい理解のためにeラーニングを行っています。

 女性管理職は、執行役員1人、理事1人と目標は達成しているものの、この比率を上げていきたいと考えています。例えばビールの営業は飲む機会が多く、女性が一人で出向くのは難しいといった側面がありました。現在は営業職に限らず、様々な職種やポジションで女性が増え、仕事を任せられています。会社全体の意識が変わりつつあると感じています。

――グローバル化を背景に製造業のサプライチェーンにおいて、人権問題への対応が重視されていますがどのような取り組みを進めていますか。

塩澤 アサヒグループホールディングスで19年5月に人権方針を策定し、人権デューデリジェンスの準備を進めています。サプライチェーンにおいては20年1月に発表された「アサヒグループサプライヤー行動規範」の中で、調達や購買の過程における人権の尊重を規定しており、事業会社それぞれが今後取り組んでいきます。

――このところアサヒグループでは海外企業の買収が相次ぎましたが、グローバル化の中での人材育成はどう図っていますか。

塩澤 現地のスタッフが担っている仕事も多いですが、当社では社員が海外のグループ会社で1年間勤務する「グローバルチャレンジャーズプログラム」という研修制度があります。

 マーケティング1つとっても、ヨーロッパにおけるプレミアムビールの広告の世界観など、参考になることがたくさんあります。多くの経験とグローバルな知見を持つ人材を、これからさらに増やしていきたいですね。