聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

環境・社会課題の解決に向けた金融商品やサービスの提供を積極的に推進する。「野村グループESGステートメント」を制定し、取り組みを一層加速する。

――まず、ESGに関する現状をどう捉えているかお聞かせください。

後藤 匡洋(ごとう・まさひろ)
野村證券 常務 インベストメント・バンキング担当
1968年愛知県生まれ。90年一橋大学商学部卒業後、野村證券入社。2009年企業情報部マネージング・ディレクター兼企業情報四課長、10年欧州・中東・アフリカ・インベストメントバンキング部門共同部門長、13年コーポレート・ファイナンス七部長、15年執行役員 インベストメント・バンキング担当、19年4月より現職(写真:村田 和聡)

後藤 匡洋 氏(以下、敬称略) お客様と接していても感じることですが、ESGへの関心はかなり高まってきていると認識しています。以前よりその傾向はありましたが、大きな契機のひとつが2019年秋に日本に上陸し、深刻な被害をもたらした2つの台風です。首都圏においても交通網が寸断されるなど、経済活動にも大きく影響しました。台風の大型化については、温暖化による海水温上昇が台風の勢力に影響を与えたとの説もあり、気候変動リスクが直接生活に関わることを実感したできごとだったと思います。

 欧州の人々は温暖化について早い段階から真剣に考え始めました。自分たちの生活圏で、気候の変動を身近に感じることが多かったのでしょう。日本においてもその認識は強まっていると考えています。

 こうした状況を背景に、地球温暖化や社会課題に対応する投資を資金使途として発行される、グリーンボンドやソーシャルボンドの発行が年々拡大を続けています。経済協力開発機構(OECD)によれば、パリ協定の「2℃目標」達成には、30年まで毎年6.9兆ドルの新規インフラへの投資が必要とされています。

 また、世界最大の資産運用会社である米ブラックロックは20年1月14日、投資先企業と顧客投資家への書簡で、ESGを軸にした運用を強化すると表明しました。同社のラリー・フィンクCEOは企業向け書簡の中で「気候変動が企業の長期的業績を決定する主因になりつつある」と述べていることからも、投資家がそうした意識を鮮明にしていることがうかがえます。