“ビュッフェ式”の人事に刷新

――働き方改革では何に重点を置いていますか。

和賀 4万人の従業員がいるなら4万通りの人生があります。4万通りは難しくても数百通りの働き方があっていい。従来の働き方にとらわれず、多様な人材が生き生きと働ける環境づくりを目指しています。

 今までの会社の人事プログラムは言ってみれば定食で、「これを食べなさい」と押しつけるものでした。そうではなく、ビュッフェスタイルで従業員が「これとこれを組み合わせて食べたい」と選べることが必要ではないか。そういう発想で人事制度改革の議論を始めています。これから役員で十分議論して内容を詰め、現場の意見を聞いたり組合とも協議した上で、できるものから2020年10月に始める予定です。

――新人事制度はどんな内容を考えていますか。

和賀 今までやっていないことにいろいろと挑戦するつもりです。例えば従業員のキャリア志向や希望を聞いた配置や育成をしたい。会社が命じる転勤を原則なくし、空席が出たら公募して書類審査や面接で配置を決める形です。適当な人材が見つからない場合は会社命令としますが、命じられた従業員に対しては、これまで以上に異動の趣旨や背景、本人のキャリアへのプラス面などを伝え、コミュニケーションを徹底するとともに、転勤回避権を付与するなど、勤務エリアに関して配慮していきます。

 また、配偶者の転勤に帯同すること、介護などで親元に戻ることを希望する従業員に対しては、転居先でも働いて収入が得られるようにサポートします。三菱ケミカルのグループ会社は全国で480以上の拠点がありますから、家庭の状況に応じて仕事があっせんできるはずです。

 子育てまっただ中の従業員が、より有給休暇を取りやすくする仕組みもつくりたい。人事部から新人事制度案を聞いた役員たちは、「ここまでやるか」とのけぞっていました(笑)。相当な議論になると思いますが、こうして会社が変わっていくのはいいことだと思っています。

――女性活用についてはどのような取り組みを進める考えですか。

和賀 女性活躍推進のための新規プロジェクトとして「ウィメンズカウンシル」をスタートさせ、女性社員が集まり、子育て中の苦労話や対処方法を話し合う場を設けています。

 といっても、女性だけを特別に処遇することは考えていません。昇任や昇格の前提条件は男性と同一です。ただ、女性はライフイベントが多いので、それがハンディキャップにならないようにしたい。出産も育児も会社には与えられない貴重な経験です。その経験を積むことは人間性を成長させる機会にもなり、会社にとってもプラスととらえています。出産・育児を経ても、普通に会社で働き続けられるというのが女性活躍のあるべき姿だと思います。

 一方で男性も女性と一緒に子育てすることが大事という考えから、男性従業員の育休や時短取得率100%も目指しています。「自らの反省を込めて」と付け加えないと妻に叱られてしまいますが(笑)。

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働き方改革では、従業員との対話も重視している。
写真左:海外拠点で勤務する外国人従業員を対象にした研修プログラム「Experience JAPAN」での対話の様子。
写真右:子育て中など様々な立場の女性社員との意見交換の場「ウィメンズカウンシル」
(写真提供:三菱ケミカル)

――大きな組織・制度改革だけでなく、製造現場のトイレを改善するなど細かいところにまで気を配っていますね。

和賀 現場に行った時にトイレがあまりにも古く汚いと感じたのがきっかけです。屋外の吹きさらしの中にあるようなトイレは、空調がきかず冬は寒くて夏は暑い。和式しかないところもあります。女性の場合はトイレの数が少なく、現場からトイレまで自転車で行かなくてはならないこともある。現場研修を経験した新入社員からも「ストレスが多い」と悩みを聞いていました。

 これから日本は労働可能人口が減少していきます。女性や高齢者も気持ちよく働いてもらえる職場環境を整備することが重要。その一環として、私が社長に就任した年から全国900カ所を対象に「トイレ改革」を始めました。工具を装着するためのハーネスやヘルメットを外して置ける場所を作ったり、粉じん対策をしたりと、試行錯誤しながら改善を進めています。