数十年で人工光合成技術を完成

――世界では海洋プラスチックゴミや温室効果ガス排出などの問題が深刻化しています。化学メーカーとして、これらの問題にどう向き合っていきますか。

「化学の力で世界の課題に解決策提供」(写真:村田 和聡)

和賀 三菱ケミカルは従来から、植物由来の生分解性プラスチックの開発を進めるなど、世界が抱える問題を解決する技術を開発してきました。今後も、新たな技術開発に真正面から取り組んでいきます。

 化学メーカーは1960年代後半、大気や水を汚染し公害問題を発生させてしまいました。様々な対策を講じ、問題を乗り越え、今では公害防止に関して日本の化学メーカーは世界トップクラスの技術を持ちます。現在、問題となっているプラスチックゴミや温室効果ガスについても、必ずソリューションを提供できると考えています。

――三菱ケミカルが提供し得るソリューションを教えてください。

和賀 具体例の1つが人工光合成です。水中の光触媒シートに太陽光を当て水を酸素と水素に分離し、取り出した水素をCO2と反応させてメタノールを合成するというものです。メタノールからはプラスチックの一種であるオレフィンを製造できる。地球温暖化の元凶と嫌われるCO2を固定化し、化学品がつくれるのです。

 化学産業は自然界のケミカルリアクションを人工的に模倣する産業といえます。例えば果物の中にはビタミンCが含まれ、摂取すると病気の予防になる。その効果は1600年ごろから知られていましたが、人類が化学の力でビタミンC、つまりアスコルビン酸をつくるまでには約200年かかりました。温暖化は刻々と進行していますので、人工光合成の実現には200年もかけられません。あと数十年のうちに技術を完成させなくてはならないと思っています。

――三菱ケミカルが持つ技術はSDGsに貢献するものが多いと感じます。

和賀 最近はストレートに「地球を救おう」と言っています。地球を救う技術のポテンシャリティー(潜在力)を持つ会社で働くって、かっこいいし、楽しいじゃないですか。4万人の従業員たちにも、ぜひそう思ってもらいたいですね。

 少し前から細々とですがテレビコマーシャルを打ち始め、こうした技術の一部を紹介しています。CMを打つことでモノがたくさん売れるようになるとか、企業イメージが上昇して優秀な人材が入ってくると期待しているわけではありません。従業員や家族の方たちに「三菱ケミカルってすごい会社じゃないか」と感じてもらえたら嬉しいです。

 こうしたワクワクするような技術をいっぱい持つ会社であることが、従業員の働きがいやモチベーションにつながることを望んでいます。

――世界では今、すべての資源を再生・再利用する「サーキュラーエコノミー」の実現に注目が集まっています。

和賀 サーキュラーエコノミーの本質をきちんと見て解を出すべきだと思っています。「何も燃やすな」「絶対に温室効果ガスを出すな」という最近の風潮は、できないことを言い立ているようで違和感があります。

 もちろん、明らかに化学品を使い過ぎている部分もあります。水を持ち歩きたければ、浄化した水道水をタンブラーに入れればいい。一方、どうしても化学品を使わなくてはいけないところもある。例えば、納豆や豆腐、ハム、ベーコンの包装資材など。昔とちがって豆腐屋は近くにないし、肉屋でハムを1枚1枚切ってもらって買うことも難しいので、ワンウェイのプラスチック容器を使うしかありません。使わずに済ませようとすれば、大量のフードロスという別の問題を引き起こします。

 三菱ケミカルは「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」にも取り組みますが、重要なのはCO2の排出と吸収のバランスが保たれていること。燃やさなくてはならないものは燃やす。そこで出るCO2は固定化して利用すればいいのです。その時に必要なのが水素です。安価に安全にそして安定的に水素をつくり、循環型社会の実現に貢献したいと考えています。