聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

筆頭株主ヤフーとの取締役人事を巡る対立などを乗り越え、新体制で再出発を図る。企業価値向上のため、赤字に陥った「LOHACO」事業の立て直しに焦点を当てる。

――2019年8月の株主総会で岩田彰一郎前社長と独立社外取締役3人の退任が決まりました。振り返って今、どのような思いですか。

吉岡 晃 氏(以下、敬称略) 筆頭株主のヤフー(現・Zホールディングス)と第2位株主のプラスが事前に取締役再任議案に反対する議決権を行使していたので、一定の覚悟はしていました。ただ、あのような形で社長と社外取締役が退任したのは今も残念な気持ちです。ああいうことは繰り返してはならないと強く思っています。

ロハコ事業の成長に焦点

――今後、ヤフーとはどのような提携関係を構築していきますか。

吉岡 晃(よしおか・あきら)
アスクル 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)
2001年アスクル株式会社入社、医療介護施設向け通販を立ち上げ、収益化を実現。12年取締役就任、個人向け通販「LOHACO」の立ち上げからCOOとして従事、19年8月より現職、株式会社チャーム 代表取締役会長兼任(写真:村田 和聡)

吉岡 株主総会後、ヤフーの川邊健太郎社長、小澤隆生専務とは数多くの議論をさせていただいています。会話を重ねる中で株主、ステークホルダーという視点で考えたとき、ひとえにアスクルの企業価値をどう高めるかに目線を合わせることが重要だという認識の統一ができました。企業価値を高めるには売上高、利益の向上が必要です。特に個人向けインターネット通販「LOHACO」事業の健全な成長に焦点を合わせてやっていこうと話が進んでいます。

――LOHACO事業は赤字に陥っています。どのように立て直しますか。

吉岡 LOHACO事業の赤字は労働者不足による“宅配クライシス”が原因です。従来は販売規模の拡大でコストを吸収しようとしていましたが、売れば売るほど赤字が広がる状況に陥ってしまいました。立て直しのポイントは3つあります。第1に直接メーカーと取引している強みを生かし、独自性がありお客様に支持される付加価値の高い商品を作り収益力を高めること。第2に自社物流のノウハウを生かし、低コストでより良いサービスを提供できる物流の構造をつくること。第3に「ペイペイモール」などヤフーのプラットフォームを活用し、お客様を広げつつローコストな運営をすること。LOHACO事業は2023年5月期までに黒字化させたいと考えています。