聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)
「地球の恵みを、社会の望みに。」というスローガンを掲げ、社会価値創造の重点4領域を設定した。産業ガスや医療、エネルギーなどの8事業を、全国で8つある地域事業会社の強みと融合させる。
――2018年11月に新たなコーポレートスローガンとして「地球の恵みを、社会の望みに。」を制定しました。その背景と狙いを教えてください。

1973年11月、大同酸素に入社。93年に大同ほくさん人事本部人材開発部長、99年7月に同執行役員人事部長、2000年4月、エア・ウォーター執行役員コーポレート・ソリューションセンター人事部長、医療事業部福祉・介護部長などを経て、12年6月に常務取締役、13年6月に専務取締役、19年6月より現職(撮影:太田 未来子)
豊田 喜久夫 氏(以下、敬称略) 1993年にほくさんと大同酸素が合併し、2000年には共同酸素と合併してエア・ウォーターが誕生しました。地球は空気と水でできていて、私たちはそれらに関わる事業を創造し、発展させていくという趣旨を込めて社名をエア・ウォーターとしました。
2019年度は10年度から進めてきた「1兆円企業ビジョン」の総仕上げのステップとなる年に当たります。実はその先どうするかが次の重要課題で、2年前に若手社員を中心に30年度について考える「未来会議」を開き、議論を重ねてきました。そこで出た結論が「地球の恵みを、社会の望みに。」でした。
私たちは30年を見据えながら事業を発展させていかなければならない。暮らしのための、生きるための事業を展開していきたい。それがスローガンに込められた意味です。
――様々な事業活動を通じて社会価値を創造していくため、4つの重点領域を定めていますね。
豊田 エア・ウォーターが大きく貢献できるのは、「安心・安全・防災」「ヘルスケア」「クリーンエネルギー」「水・環境」の4分野です。
これから高齢化社会が進んでいくと、安心・安全・防災とヘルスケアは特に重要になります。例えば災害に備えて高齢者を助けられる町や地域づくりをしていかなければいけません。ロボットや機械ができることと、人間が本当にやるべきことをしっかりと分けて考えるべきです。
もう1つ思うのは、地域をもっとよく見ること。そうすれば、これからの仕事につながっていくのではないかと思っています。
エア・ウォーターは産業ガス、ケミカル、医療、エネルギー、農業・食品、物流、海水、エアゾールの8事業を展開し、一方で8つの地域事業会社を事業推進の基盤としています。知恵と資金と地域がうまく重合すれば、新しいビジネスが生まれ、それがSDGsにつながります。そう考え、専務取締役をSDGs推進担当に任命し、社内の運営体制を整えました。