聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

三菱UFJ銀行は取引先企業のESGやSDGsへの対応支援に力を入れている。グループで2030年度までに「サステナブルファイナンス」を20兆円規模で実行するなど取り組みを進める。

――金融機関としてESGやSDGsにはどのように対応しますか。

小林 真(こばやし・まこと)
三菱UFJ銀行常務執行役員 ソリューション本部長
1985年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行、2010年三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)シンジケーション部長を経て11年同行執行役員ストラクチャードファイナンス部長に就任。15年より現職(写真:村田 和聡)

小林 真 氏(以下、敬称略) ESGやSDGsを重視する経済界の動きは今後さらに加速すると思います。金融機関もESGやSDGsにいかに対応するかが1つのメルクマールとなるでしょう。

 私がプロジェクトファイナンスに携わった1990年代にも、大規模な資源開発などの案件では環境リスクの問題が取り上げられていました。2000年を過ぎた頃から環境配慮のグローバルな統一規則をつくる動きが生まれ、03年の「赤道原則」策定に至ります。当時、米国に赴任していた私は環境重視の流れが出来上がる過程を肌身で感じたものです。10年頃からCSRやESGに注目が集まり、国連のSDGs採択を機にその方向性は揺るがぬものになりましたが、個人的な経験からも、この流れは一層速まると見ています。

――その中で三菱UFJ銀行はどのような役割を果たしていきますか。

小林 まずは1つの企業体として我々自身がESG経営を実践することが重要です。環境に関していえば、既にCO2排出量の削減や環境リスクの管理手法の高度化に努めています。社会への貢献や適切なガバナンスに関しても取り組みを一層進めたいと思います。

 もう1つ、金融機関としてお取引先企業がESGやSDGsに対応するための相談にものりたいと考えています。20年1月には三菱総合研究所と共同でESG経営に関するセミナーを開催しました。様々な業種から110社の企業が集まりました。参加したのは経営企画など経営戦略の構築に携わる方がほとんどで、皆さんESGやSDGsをどう経営に取り込むべきかと悩んでいることを実感しました。企業がどのような方向で経営をつかさどるべきか、我々も一緒に考えていきます。

――ESGやSDGsの観点でファイナンスはどのように行いますか。

小林 お客様への金融サービスを通じて社会課題を解決し、持続可能な社会の実現やSDGs達成に貢献したいと考えています。そのために三菱UFJフィナンシャル・グループは19年5月、「サステナブルファイナンス目標」を設定しました。ファイナンス額は19年度から30年度までで累計20兆円。環境分野に8兆円、社会分野などに残りを投じます。再生可能エネルギー、スタートアップ企業の育成、雇用の創出、地域活性化、インフラ整備などのテーマでファイナンスを実行します。

 サステナブルファイナンスは、「グリーンローン」や「グリーンボンド」のように資金使途を認証した上で行うもの、目標の達成度に応じて条件を変動する「サステナビリティリンクローン」のように企業のESGの取り組みを評価して行うものなどに類型化しています。こうしたサステナブルファイナンスは社会的なインパクトが大きく、業界内での波及効果も期待できます。

■ ESGにおける機会とリスク両面での対応を積極的に推進
出所:三菱UFJ銀行
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――ファイナンス以外に進めている取り組みはありますか。

小林 産業育成や雇用創出を見据えたサービスとして、コーポレート情報営業部が中心となって年に1回、大規模商談会を開いています。ふだん関わる機会の少ない異業種のお取引先を一同に集め、販路の開拓などビジネス拡大のお手伝いをするものです。1回で9000件の商談が生まれるような大規模なビジネスマッチングイベントですが、手数料は無料です。お取引先がビジネスを作り上げ、成長していく過程でまた我々がお手伝いしたいと思っています。お客様の持続的な成長のために商売を紹介したり、ネットワークをつくったりすることも、我々のESGの1つのやり方だと考えています。