聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

2020年1月にグループ再編を発表、顧客と向き合う組織を再定義した。デジタル化を推進し、顧客の利便性も労働環境も改善、企業価値を高める。

――中長期的な経営のグランドデザインとして、2020年1月に経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を発表しました。どのような想いが反映されていますか。

長尾 裕(ながお・ゆたか)
ヤマトホールディングス 代表取締役社長
1965年生まれ。88年ヤマト運輸入社。2010年同社執行役員 関東支社長、15年同社代表取締役社長 社長執行役員 兼 ヤマトホールディングス執行役員、17年同社代表取締役社長 社長執行役員 兼 ヤマトホールディングス取締役執行役員を経て、19年4月よりヤマトホールディングス代表取締役社長 兼 社長執行役員(撮影:木村 輝)

長尾 裕氏(以下、敬称略) 19年に創業100周年を迎え、世の中の変化に対応できているのか、当社が目指すべき方向を再度見直したほうがいいのではないかといった問題意識が根底にありました。

 1919年、まだ日本にトラックが200台ほどしかなかった時代にトラック輸送の貸切ビジネスを始め、10年後には複数のお客様の荷物を積み合わせる路線事業に着手しました。今から約40年前、個人間の荷物の輸送をパッケージ化した宅急便を手掛けるなど、常にイノベーターであり続けました。

 宅急便によって世の中の利便性は大きく変わりました。しかし、ここ数年スマートフォンの普及などを背景に、商品の売買やサービスの形態が変化し、一方で気候変動などの問題も出ています。大きな改革プランを打ち出したのは取り組むべき課題もそれだけ大きいからです。お客様に真摯に向き合うというあるべき姿の実現に向けて、やるべきことが数多く見えてきました。

――経営構造改革プランではESG経営にどう取り組みますか。

長尾 アジェンダとして13の経営課題を掲げており、その1つがESGに真剣に向き合うという内容です。

 ESGのS(社会)に向けた取り組みに力を注いできましたが、どのような結果を生んでいるのか、定量的に捉える点が不足していました。環境に関していえば、街中の密集地では車を使わず手押しの台車で集配をしています。お客様に荷物を直接手渡しする、「ラストマイル」の一部は車を使っていません。

 これにより、どれくらいCO2排出削減効果があるのかを認識することが重要であり、差別化の要素にもなります。

 当社は全国に数多くの拠点があるので、配送の仕組みをオープンにする方法も考えていきたいです。トラック業界は中小の事業者が多く、EV車を買うにも充電インフラも含めると大きな投資になるので簡単ではありません。全国3700カ所ある当社の拠点に充電設備を徐々に増やしてシェアすることができればと考えています。

 これまではより良いサービスを提供することで差別化を図ってきましたが、事業を通じてサステナビリティをどうつくり出していくのかが今後重要になっていくと考えています。

■ 「YAMATO NEXT100」による経営のグランドデザイン
出所:ヤマトホールディングス
[クリックすると拡大した画像が開きます]