聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

先端の技術力でインフラ基盤を創生し、社会のニーズに応えてきた。情報・エネルギー・モビリティを融合させた街づくりを視野に技術革新に取り組む。

――「古河電工グループ ビジョン2030」を2019年に策定しました。どのような狙いがありますか。

小林 敬一(こばやし・けいいち)
古河電気工業 代表取締役社長
1959年北海道生まれ。85年早稲田大学大学院理工学研究科修了後、古河電気工業入社。 2014年執行役員、銅条・高機能材事業部門長、15年取締役兼執行役員常務、自動車・エレクトロニクス材料系事業部門管掌兼銅条・高機能材事業部門長、16年代表取締役兼執行役員専務、グローバルマーケティングセールス部門長を経て17年より現職(撮影:村田 和聡)

小林 敬一 氏(以下、敬称略) 創業者の古河市兵衛は「日本を明るくしたい」という願いのもと、「従業員、お客様、新技術を大切にし、社会に役立つことをせよ」と言いました。これは今でいうSDGsの考えそのものといえるでしょう。その歴史を受け継ぎ、さらに持続可能な企業として発展していくため、新しい価値を世の中に提供していきたいと考えています。

 34年に創業150年を迎えますが、その少し手前、30年に当社はどんな姿でありたいか。その頃、経営を担うであろう若手メンバーを集め、未来を徹底予想してもらい、今回のビジョンを練りました。地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現させるため、情報・エネルギー・モビリティが融合した社会基盤を創ることを掲げています。

 このビジョンは未来社会への環境対応だけでなく、自ら積極的に変革する企業になりたいという思いも反映しています。当社が目指す領域を明らかにすることで、社外とのパートナーシップも促進し、共創する仲間づくりに力を入れていきます。

――社会課題の解決のために、技術をどのように活用していきますか。

小林 メタル、ポリマー、フォトニクス、高周波の4つのコア技術を活用します。

 例えば、情報とモビリティの技術を融合することで渋滞に巻き込まれずに運転できたり、エネルギーとモビリティの融合によりワイヤレス給電が可能になったり、道路の地下に通信ケーブルなどを通してセンサーや通信機器とつながることで歩行者に車の接近を知らせたりする。

 そのためにコア技術を進化させるのはもちろん、バリューチェーンで補完してもらえるように、オープン、アジャイル、イノベーティブに事業を展開し、変化に対応できる運営形態を目指していきます。

■ 2030年までに情報・エネルギー・モビリティが融合した社会基盤の創出を目指す
若手社員のグループが議論を重ね、「古河電工グループ ビジョン2030」を策定した
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コア技術に磨きをかけ、他社と共創することにより、情報・エネルギー・モビリティが融合した社会基盤を創ることを目指している
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図版提供:古河電気工業

――今後のR&Dと投資計画について教えてください。

小林 情報・エネルギー・モビリティが融合した「次世代のインフラ」を考案し社会実装を目指す組織として、平塚事務所内に19年、次世代インフラ創生センターを設立しました。次世代モビリティを支える通信システム、5Gの活用や、人と街をつなぐ地下配線技術、非接触給電技術などの開発のため、オープンイノベーションを図っていきます。

 加えて同年、横浜事業所内にオープンイノベーション推進拠点「FunLab®」を新装し、企業、大学、公的研究機関などと共創するための場を拡張しました。技術開発の発信や社外関係者との交流ができ、様々な声を反映できるよう、意見交換のための丸テーブルやホワイトボードを至る所に設置しています。