聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

食用油脂などの食品素材加工で70年の歴史を持つ老舗が「C“ESG”O」の役職を新設した。肉や乳製品を植物素材で代替する技術で、地球規模の食糧問題の課題解決に挑む。

――「C“ESG”O」という役職を新設した狙いは何でしょうか。

門田 隆司(かどた・たかし)
不二製油グループ本社 取締役 兼 上席執行役員 最高ESG 経営責任者(C“ESG”O)
1959年大阪府生まれ、85年広島大学大学院工学研究科修了、85年不二製油入社。2015年執行役員、生産管理本部生産技術開発部長、同年不二製油グループ本社執行役員 研究開発戦略グループ、16年執行役員 技術開発部門長、17年不二製油グループ本社執行役員 生産性推進担当 兼 技術開発・生産管理部門長、18年不二製油グループ本社取締役・執行役員 最高品質責任者(CQO)兼 不二製油技術開発・生産管理部門長19年4月より現職(写真:山田 哲也)

門田 隆司 氏(以下、敬称略) C“ESG”Oは、清水洋史代表取締役社長が2018年の年末に発案した役職です。当グループは、使命・存在理由である「ミッション」、目指す姿を表す「ビジョン」、行動する上で持つべき価値観の「バリュー」からなる「グループ憲法」を持っており、「バリュー」の4つの項目の2番目に「人のために働く」とあります。不二製油の価値観は、ESGと非常に親和性が高いのです。

 当社の大豆素材事業はおよそ60年前から、油を搾ったあとの「脱脂大豆」を原料にした「代替肉等」の事業に取り組んできました。これまではなかなか収益につながりませんでしたが、それでも止めなかったのは、創業者の「代替肉は将来、絶対、人類のためになる」という強い思いがあったからこそです。これが現在、地球の人口増と環境問題、食糧問題とリンクし、代替肉として注目され始めました。

 不二製油は「技術」をバックボーンに経営してきましたが、さらに「社会課題の解決」を軸に据えれば、企業としてのサステナビリティにつながると考えたことも、C“ESG”Oの狙いの1つです。

 創業以来、経営の根底にあるSDGsやESGに通じる考え方を、社会に向かって表現していくためにつくられた役職がC“ESG”Oなのです。

■ 不二製油グループ憲法
出所:不二製油

――C“ESG”Oになられてからの1年間、どのようなことに取り組まれてきましたか。

門田 まず、不二製油グループの社員6000人にC“ESG”Oの仕事の内容を周知させることが必要で、特に海外の社員4000人余りにどう伝えていくかが課題でした。19年1月に業務用チョコレートで世界的に大きなシェアを持つ米国企業「ブラマー」の株式を取得したのですが、ブラマーはサステナビリティについての考え方をもともと持っていたので、すぐにC“ESG”Oの意味を理解してくれました。欧州の社員も比較的早く理解してくれましたが、ほかのグループ企業からは、「ESGでどうやって儲ければいいのか」と反発の声も上がりました。

 そこで、我々のESGはどこに向かっていくのかを具体的に示しながら、「取り組みに協力してほしい」と説明していくと、ほどなく理解してくれました。1年間、そういった啓発活動を主に続けてきました。従業員による理解はESG経営推進の源泉です。今後も継続して従業員に対する説明活動に注力していきます。