聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

「革新的な医薬品・サービスの提供」を掲げ、ロシュとの戦略的アライアンスで知られる。ESG経営でもロシュとの協働を進め、SDGs達成に向けて社員のアイデアを具体化する。

――経営方針に「共有価値の創造」を掲げる思いを聞かせてください。

上野 幹夫(うえの・もとお)
中外製薬 代表取締役副会長
1957年生まれ、80年慶應義塾大学工学部卒業。84年中外製薬入社、94年取締役中外ファーマヨーロッパ社長、95年取締役臨床開発本部長を経て98年常務執行役員医薬事業本部副本部長に、2004年代表取締役副社長執行役員に就任、12年より現職(撮影:村田 和聡)

上野 幹夫 氏(以下、敬称略) 中外製薬のミッションは革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、世界の医療と人々の健康に貢献することです。これまでも様々なステークホルダーと社会課題の解決に取り組んできましたが、不確実で多様性が増す経営環境下でミッションを達成するには、より明確に価値創造の道筋を示すことが重要です。

 そこで2019年、「患者中心の高度で持続可能な医療の実現」に向けてステークホルダーと共有価値を創造することを経営の基本方針に掲げ、中期経営計画にその戦略を盛り込みました。サイエンス力・技術力を核にイノベーションに集中することで共有価値創造を果たし、社会の発展に貢献しつつ当社の持続的成長を実現します。

 こうしたCSVやESGの意識は当社が代々受け継いできたものです。関東大震災後の薬不足を憂いて創業者が1925年に中外製薬を立ち上げました。日本はもちろん世界の患者に貢献したいという思いから今の社名がつきました。

 厳しい経営環境にあった67年には「社会性の追求」「人間性の追求」「経済性の追求」の3点を企業方針として掲げ、後にこの「企業3原則」は行動理念として社内に定着しました。今、3原則が表に出ることはありませんが、我々のDNAには組み込まれています。