聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

2013年に古河スカイと住友軽金属工業が経営統合して発足したアルミ製品のグローバルメーカー。持続可能な社会の実現に向けて、ESG視点で新たな企業理念体系を再定義した。

――新しい企業理念体系を再定義した背景を教えてください。

石原 美幸(いしはら・みゆき)
UACJ 代表取締役社長兼社長執行役員
1981年住友軽金属工業株式会社入社。同社執行役員・生産本部副本部長を経て、2013年UACJ執行役員・生産本部名古屋製造所長などを歴任。18年6月より現職(写真:村田 和聡)

石原 美幸氏(以下、敬称略) 現在、UACJグループの従業員数は1万人を超え、経営統合後に入社した社員やM&Aで加わった社員も増えています。そこで、統合6年目にあたる2019年、UACJとして大事にしたい理念や価値観を再構築し、企業文化を改めて共有しようと考えたのです。

 新しい企業理念は、「素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する」というものです。同時に、今後5~10年を見据えた「目指す姿」と「価値観」、グループ社員の具体的な「行動指針」(ウェイ)をまとめました。現在は、当社の姿勢をひと言で表す「タグライン」の策定中で、アルミの会社ということを改めて強調していきたいと考えています。

――経営理念の再定義には、若手や中堅社員のヒアリングも行ったと伺っています。

石原 19年2月から、国内外グループ各社105人を対象に、理念からタグラインまでのアイデアを募集しました。ウェイに関しては420人にアンケートをとるという社員参加型で進めてきました。祖業である古河と住友の創業者はともに、企業は公器であると述べており、この信条を踏まえつつ、現在の事業を念頭に入れて理念を再定義したのです。

■ 社員1人ひとりの道しるべとなる「UACJウェイ」
UACJの理念を実現するために、グループ社員全員の羅針盤となる行動指針を定めた。安全とコンプライアンスを基盤に、3つの価値観のもとで未来へ進んでいこうという意志を表している。より具体的な内容としては、「人の多様性を認め、価値観を尊重する」「『未来志向』で時代を先取りし、地球環境を守る活動に積極的に取り組む」「社会の将来に向けたオープンイノベーションに対して、創造力を持って取り組む」などを示している

アルミニウムで環境負荷低減

――「目指す姿」には、「アルミニウムを究めて環境負荷を減らし、軽やかな世界へ。」とあります。

石原 私たちは、アルミ製品をつくること自体が環境負荷軽減につながるという思いで仕事をしています。

 アルミニウムにはリサイクル特性が高く、リサイクルすればするほどCO2が減らせます。原料のボーキサイトからアルミニウム地金を生成する過程では、多くのCO2を排出しますので、可能な限りリサイクルによって調達することで、環境負荷を軽減できるわけです。また、軽量であるという利点から、自動車のボディに使用することで燃費向上および航続距離の延長が期待できることも環境負荷軽減につながります。

UACJでは、鋳塊の製造から、熱間圧延、冷間圧延、表面処理、熱処理、矯正、切断など、仕上げ工程までに至るアルミニウム板の一貫生産を行っている
写真はラヨン製造所(タイ)
(出所:UACJ)

――今後のアルミ製品の用途拡大には、研究開発の推進や、他社との共創が重要になってくると思います。

石原 私たちは、素材研究については誰よりも負けませんが、どういう用途にアルミを活用するかについては、お客様の商品開発力が欠かせません。そこで、研究開発と共創の拡大を目指し、19年にR&Dセンターをリニューアルした際に、U-Al Lab.(ユーアイラボ)というイノベーションエリアを設置しました。お客様とともに、共創できる分野を探していくことが設置目的の1つです。

 具体的な共創の一例が、薬の飲みすぎや飲み残しを防ぐために、SAP社やドクターズ社と共同研究を行った服薬管理システムです。開封検知付アルミ箔を使用することで、遠方にいても患者さんの服薬状況の管理を可能にしていくつもりです。