日本初の再エネ自給自足ビル

――温暖化対策の具体的な事例を伺います。2018年2月に完成した「大和ハウス佐賀ビル」は日本初の再生可能エネルギーによる電力自給自足オフィスですね。

「大和ハウス佐賀ビル」は日本初の再生可能エネルギーによる電力の自給自足を実現している
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土田 このビルはRE100とEP100を具現化したモデルオフィスで、産業環境管理協会の「第1回エコプロアワード」で国土交通大臣賞を受賞しました。

 太陽光発電と蓄電池を組み合わせ、昼に発電した電力を夜に使えるようにする電力自立システムに加えて、電力を最も消費する空調向けに井戸水と太陽熱を利用したハイブリッド空調システムを導入しています。これまで様々な自社施設で試行・実証してきた取り組みの集大成といえるビルです。

 昨今、気候変動による台風・豪雨被害が深刻になっていますが、このビルなら電力系統に接続せず自給自足でき、かつ蓄電池により長期間停電にも耐えられるので、その意味ではBCP(事業継続計画)対策としての効果も期待できます。

 現在、データを取りながら検証を行っており、コスト面も含め問題点の把握と対応を進めています。今後、温暖化対策やBCP対策に積極的なお客様に向けて、ぜひ商品化もしたいと考えています。

――蓄電池の量産化が進むとコストも下がってくるのでしょうか。

土田 蓄電池は当社グループが筆頭株主を務める企業が製造しており、住宅では既に数多く導入していただいています。当社でも停電時のBCP対応として全オフィス、工場、現場事務所にも蓄電池が設置してありますし、新設の工場にも大量導入する予定ですので、今後は生産量と比例して価格が下がっていくと考えています。

――SBTの取得についてはいかがでしょうか。

土田 自社活動における温室効果ガス排出量削減について、「2度目標」と整合した長期にわたる削減目標を設定しています。温室効果ガス排出量は2015年に、2005年比で41%削減を達成していますが、これを2030年までに同比45%、創業100周年の2055年までに70%削減を目指しています。

 今期、グループでの売上高は4兆円を超える見込みですが、創業100周年に10兆円を目指す中で、現在売上高の5%程度である海外比率を増やしていくことが必須です。

 海外で大和ハウスブランドを立ち上げるとき、省エネ、節電といった環境に対する取り組みが武器になります。RE100やEP100はもちろん、SBT認定を受けていることも、IRやESGの取り組みとして、とても分かりやすいシンボルになります。だからこそ取り組みを早期にスタートさせたという背景があります。

 目に見える形で取り組んでいることで、グループの役職員全員が同じ目標に向かっていくという意識が育ち、グループの足並みが揃うという成果がすでに生まれています。

創業者精神を軸に

――温暖化対策は一朝一夕では達成できない取り組みですが、どのような考え方で進めていますか。

■ 創業者精神に基づいたESG
創業者の石橋信夫氏が著した『わが社の行き方』(左)と、樋口武男会長が著した『創業者精神の継承』(右)は、社員全員に配布される。同社のESGの取り組みの根底には「事業を通じて世の中の役に立つ」の精神がある
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土田 やはり、当社の創業者精神である「儲かるからではなく世の中の役に立つからやる」ことを基本姿勢として、「人が心豊かに生きる社会の実現」という経営ビジョンの考えが根本にあります。今進めている事業はまさに、目先の利益を見ているのではなく、世界人類が心豊かに生きていける社会を実現するためにやっているわけです。

 創業者の石橋信夫は亡くなる2年前の2001年、「21世紀の事業は『風・太陽・水』だ」という言葉を残しています。これはまさに、いま当社が進めている発電事業そのものです。環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」策定の背景にあったのも、創業者精神と創業者のこの言葉でした。

――ESGのE以外の部分で力を入れている社会課題解決に向けた取り組みについても教えてください。

土田 Sの部分では今、世間の流れにもなっている働き方改革に力を入れています。特に当社のような事業では、現場の労働環境改善が重要になります。

 建設現場では高齢化が進む一方、若い人財がなかなか集まりません。このままでは建設業が若い人にとって魅力のない産業になり、衰退してしまいます。