新環境ビジョンを策定

――このほど「アサヒ環境ビジョン2050」を策定、公表されました。この新環境ビジョンの狙いはどこにあるのでしょうか。

小路 パリ協定をはじめとした気候変動に関する取り決めや、海洋プラスチック問題も含めた容器包装に関する関心の高まり、さらには水資源、食料問題なども加えて、環境が事業に与える影響やリスクが非常に大きくなっていると捉えています。

 当社の事業は、ビールの原料である麦や水をはじめ、自然の恵みによって成り立っています。ですからこうした事業リスクへの対応は、持続可能な事業継続のために必要不可欠だと考えています。社会を取り巻く課題には様々なものがありますが、とくに自然の恩恵を受けて事業活動を行っている企業グループとして、自然環境保全に向けた取り組みはさらなる成長のためにもきわめて重要なテーマです。そこで、これまでの環境ビジョンを刷新した「アサヒグループ環境ビジョン2050」を策定し、自然環境の保全はもちろんのこと、自然環境をさらに良くしていくことも目指しています。

――「アサヒ環境ビジョン2050」のポイントを詳しく教えてください。

小路 自然の恵みを次世代につないでいくため、「ニュートラル」と「プラス」のコンセプトを軸にビジョンを策定しました。

 「ニュートラル」は、環境負荷をニュートラル、すなわち相殺するという発想でグループの事業活動における環境負荷ゼロに向けた取り組みです。これは大きく分けると2つあり、1つは2050年までに国内の事業活動におけるCO2排出量ゼロを達成する中長期目標「アサヒ カーボンゼロ」を設定しています。これは国内食品業界で初の取り組みとなります。まずはパリ協定やSDGsを踏まえ、国内事業において2030年のCO2排出量を2015年比で30%削減していきます。

 2つめは、当社の事業にとって不可欠な農産物原料、容器包装、水において、持続可能な資源利用100%を目指すことです。農産物原料の持続可能な調達100%、国内ビール工場で使用する水の100%還元と社有林を中心とした森林資源の持続的管理による水涵養能力強化、リサイクル素材やバイオ素材を活用した環境に優しい容器の開発・導入に取り組みます。

 そして、単にニュートラルであることにとどまらず、グループ独自の技術や知見を活かし、環境を現状よりもっと良くする、つまり環境に「プラス」となる価値の創出にも挑み、社会課題の解決に貢献します。当社のリソースであるビール酵母や乳酸菌をはじめとする微生物の活用や工場排水の再利用技術によってイノベーションを起こし、事業を通じてプラスの環境価値を作り出していきます。

■ 「環境ビジョン2050」の骨子
(出所:アサヒグループホールディングス)
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――いずれもかなり野心的な目標ですが、まず環境負荷ゼロに向けては具体的にどう進めていく考えですか。

小路 CO2排出量ゼロは、省エネ努力や再生可能エネルギー活用に加えて、当社だけでなくバリューチェーン全体でCO2削減の取り組みを着実に進めていきます。とくに再生可能エネルギーについては、現在、「アサヒスーパードライ」の350ml缶とギフトセットのすべてを風力発電とバイオマス発電のグリーン電力で製造しているのですが、今後も継続しながら再生可能エネルギーの活用に積極的に取り組んでいきます。

――持続可能な資源利用100%に関しても、様々な取り組みがすでに始まっていると伺いました。

小路 たとえば工場での水使用を当社独自技術の活用でさらに削減するほか、広島県の社有林「アサヒの森」で水涵養能力を高め、2025年に工場で使う水の量と森が涵養する水の量を同等にすることで、水を100%自然に還元するウォーターニュートラルを目指します。

 容器包装の部分では、アサヒグループとしては「2050年に持続可能な容器使用を100%」にすることを目標として設定しています。このビジョンの目標を基に、既に国内外の事業会社が自社の商品での取り組みを開始しています。例えばグループ会社のアサヒ飲料では、環境ビジョン2050を基に自社目標として「容器包装2030」を制定。まず、2030年までにPETボトルをはじめとするプラスチック製容器包装の全重量の60%でリサイクルPET素材や植物由来の環境配慮素材を使用することを目指します。

 2018年に発売して話題になったラベルレスボトルを拡大し、プラスチック製容器包装の重量削減に取り組みます。グループ会社としても、プラスチック以外の次世代容器や環境配慮素材の新容器開発にも力を入れていきたいと考えています。

■ 水資源を生む「アサヒの森」
森が生み出す水でウォーターニュートラルを目指す
(写真提供:アサヒグループホールディングス)
■ ラベルレスボトルを拡大
 
ロールラベルを廃止し、容器包装の重量削減を実現
(写真提供:アサヒグループホールディングス)