環境価値をプラスするCSV

――プラスの環境価値を創出する取り組みについても教えてください。

小路 まずは、ビール酵母や「カルピス」の乳酸菌といった微生物、および発酵技術の活用によって、CSV(共有価値の創造)の取り組みを進めています。ビール醸造の副産物である「ビール酵母細胞壁」は、これまでにも家畜の飼料に混ぜて栄養剤として使っていたのですが、さらに高い付加価値の提供で農業の課題解決に寄与するため農業資材として活用することが実現しました。

■ 飼料添加物で家畜の健康に貢献
全世界の鶏肉生産の10%で使用されるアサヒカルピスウェルネス「カルスポリン」
(写真提供:アサヒグループホールディングス)

 土壌の改良や収量増、免疫強化による農薬・化学肥料の削減で農家の方に貢献するほか、自然の素材ですから環境面や健康面でもプラスの価値を生みます。この取り組みのため、2017年に製造・販売を担当する事業会社、アサヒバイオサイクルを設立しました。一事業部門では限界もあるため、事業会社として責任を持ち、一定の利益を出しながら持続的なCSVを行うことが重要だと考えています。

 「カルピス」の乳酸菌などを扱う事業会社として2015年に設立したアサヒカルピスウェルネスでは、畜産の飼料事業を展開しています。枯草菌由来の主力製品「カルスポリン」は鶏や牛、豚などに与えると腸内フローラを最適化し、肉質を良くできるほか、生物由来ですので健康を担保した飼育にも貢献します。

 さらに飼料効率の改善によって飼料穀物を削減でき、環境負荷低減や食料問題にも貢献しています。世界的に抗性物質不使用のニーズが高まる中、「カルスポリン」は日本、米国など18カ国で販売され、全世界の鶏肉生産の10%で使用されています。

 そのほか、ビール工場では20年以上前から産業廃棄物ゼロ化に取り組んでいますが、工場排水から取り出したメタンガスを当社の技術で高純度精製し、それをもとに作った電気エネルギーを蓄電して活用する実験をしています。メタンガスを発する工場であればどこでも使えるので、この取り組みを全産業に広げていければ、環境に対するプラス価値の創出にもつながっていくでしょう。

独自リソースを徹底活用

――「プラス」の取り組みの特徴はどういった点にあるのでしょうか。

「“自然の恵み”を持続させたい」
(写真:川田 雅宏)

小路 当社グループが持つ多彩なリソースを活用し、事業として取り組んでいる点でしょう。ビール酵母にしても乳酸菌にしても、あるいは工場排水を再活用する技術にしても、すべては当社が持っているリソースを使って取り組んでいます。独自の強みを最大限活かすことにこそ価値があり、だからこそ評価もいただけているのだと考えています。

――アサヒグループにはESG、SDGs、CSVの考え方が文化として根付いているのでしょうか。

小路 私は社長として、当社の事業は自然の恵みで成り立っていることを重ねて強調しています。地球環境が悪化すると事業の継続性が担保できなくなるわけですから、地球環境に貢献していくことが事業を次世代につなげるためにも必須です。率直に言って文化として根付いているかどうかまではわかりませんが、環境に貢献する取り組みを継続していけば、必然的にそれがグループの文化にもなっていくでしょう。