聞き手/望月 洋介(日経BP総研所長)

「お客様のために進化する」という企業理念のもと、社会課題の解決に取り組む。そのベースにあるのは、本業を軸とした持続可能な仕組みづくりだ。

――ESG、SDGsを企業戦略の中でどう位置付けていますか。

岩田 彰一郎(いわた・しょういちろう)
アスクル 代表取締役社長 兼 CEO
1973年ライオン油脂(現ライオン)入社、商品開発などに携わる。86年プラス入社、主に文具の商品開発を担当したのち92年新規事業であるアスクル事業推進室室長に就任。97年アスクルの分社独立とともにアスクル代表取締役社長に就任(写真:木村 輝)

岩田 彰一郎 氏(以下、敬称略) 本業を通じて社会課題を解決していくことこそが企業本来に求められる社会貢献であると考えています。企業のその姿勢自体が働く人たちのモチベーションになり、その成果をお客様が評価して、企業の業績も上がっていきます。

 1997年の創業時に設定した企業理念が「お客様のために進化する」です。2014年には「LOHACO ECマーケティングラボ」という仕組みをつくり、お客様のデータを社会に還元するためオープン化を図ってきました。これも企業が社会の公器であり、お客様のために事業を行うのだという思いが根底にある取り組みです。私自身は経済同友会で社会的責任経営委員会の委員長を2期務め、「資本市場(株主)」だけでなく「従業員」と「社会」の姿も映しながら社会責任を全うする経営を徹底するという「三面鏡経営」を提言しました。創業以来変わらぬ思いを企業戦略の中心に位置づけ、行動してきました。

――ESG、SDGsに関わる特徴的な取り組みを紹介してください。

岩田 過去にカタログの中で環境ラベルを誤表示してしまったことがありました。それを教訓に、正しい情報を提供するのが責任だと考え、情報管理を強化しました。

 その後、中小企業向けに廉価で品質の良いコピー用紙を提供するため、海外の製紙メーカーから供給を受けることにしました。ところがその企業からは熱帯雨林の伐採について環境NGOから指摘を受けるなどの問題が出てきたため、当社のガバナンス主導で現状を変えていこうと決意したのです。そこでその製紙メーカーと議論を重ねながら、様々な環境課題の解決や地域社会への貢献に向けた取り組みを続けています。たとえば「1 box for 2 trees」という活動は、コピー用紙1箱の購入に対して原材料となる2本の木の植林を確認し、現地の方とともに育て、収穫し、再びコピー用紙を作るというものです。製紙メーカーには継続的改善をお願いし、当社からも問題提起を続けています。

■ インドネシアにおける森林資源の保全と循環の仕組み
A4のコピー用紙1箱5000枚の原材料としてアカシヤやユーカリの木が1本必要だが、その倍である2本の植林の実行を確認していくのがアスクルの「1 box for 2 trees」活動のコンセプトである
(出所:アスクル)
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