聞き手/望月洋介(日経BP総研 所長)

創業者の精神に根ざすDNAを110年以上の長きにわたって受け継いできた。「人」を中心に据えた技術で顧客の課題を、ひいては社会の課題を解決に導いていく。

――110年を超える長寿企業の源泉について説明していただけますか。

曽禰 寛純(そね ひろずみ)
アズビル 代表取締役社長兼執行役員社長
1955年神奈川県生まれ。東京工業大学工学部卒業後、1979年4月山武ハネウエル(現アズビル)入社。経営企画部長、常務経営企画部長、取締役を歴任した後、2012年4月より現職(写真提供:アズビル)

曽禰 寛純 氏(以下、敬称略) 1906年に創業者の山口武彦が山武商会を設立し、工作機械の輸入・販売を行う技術商社としてスタートしました。背景には、「先進技術によって人間を苦役から解放する」という思いがあります。要は技術の力で人の幸せを創造し、人間がより人間らしい仕事に従事できる社会を作ろうということです。その後、計測・制御のメーカーになりましたが、事業の原点にはやはり創業者の思いを受け継いだDNAが根付いているのだと思います。

 計測・制御の技術を軸にして、お客様の課題解決に取り組むことで商売をしています。現場で価値をつくり出し、課題に合わせて継続的に取り組むため、正面から真面目に向き合い続けてきました。

――そのDNAが、「人を中心としたオートメーション」という現在の理念に引き継がれているのですね。

曽禰 2006年の創業100年に際し、グループ理念を作り直しました。DNAを強化しつつ、次の100年に向けたミッションとして、「人を中心としたオートメーション」を打ち出しました。この根底にあるのは、計測・制御という一見無機質なものと血の通った人間を組み合わせることで、社会を意識しようという思いです。この理念を全社員が折にふれ確認するために理念ブックも制作しました。社員は理念ブックを常に携帯し、暗誦し、事業に臨むにあたって理念に立ち返っています。

■ SDGsの取り組み
人が人らしい仕事に専念するために、オートメーションを通して社会課題に向き合うという、一貫した理念は創業時から変わらない
(出所:アズビル)
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――現在、このDNAはどのような場面で発揮されていますか。

曽禰 課題に取り組みながら、あらゆる変化に対して新たな価値を模索し続けています。課題を解いていくには、お客様がどういう状態で困っているのかを科学的に測る必要があり、これはまさに計測・制御が貢献できるところです。

 例えば建物を考えると、数十年前ならとにかく夏に温度を下げることが価値でしたが、いまは環境負荷の問題が出ている。すると今度はきめ細かな温度管理や、地球環境を念頭に置いたグリーンビルディングの実現といった解決策を提供することが価値になります。計測・制御の技術と「人を中心としたオートメーション」によってサービスを提供し、課題を解決することで、新たな機会へと発展していきます。