聞き手/田中 太郎(日経ESG編集長

ESGを新たな成長の柱として位置づけ、社長直轄の専門部署を新設した花王。これまで注力してきた環境分野での先進的取り組みを、今後は世界に展開していく。

――2018年7月に社長直轄のESG部門統括に就任しました。就任の際、マンツさんの役割などについて社長からどのような話がありましたか。

Dave Muenz(デイブ・マンツ)
花王 執行役員 ESG部門統括
複数の食品・日用品のメーカーや小売業での経験を経て、1998年から花王で主に研究開発及びマーケティングでマネジメントに携わる。2019年より現職。花王のグローバルなESG戦略の策定、実行を主な役割とする(写真:木村 輝)

デイブ・マンツ 氏(以下、敬称略) 社長から初めて打診されたのは2018年4月でした。ESGに対する考えや専門部署発足の意向を聞き、部門統括のオファーを受けたのです。私は花王で研究開発やマーケティングに携わり、最近は欧米のマススキンケア・ヘアケア事業の責任者をしていましたから、ESG部門統括という立場に非常に驚きました。様々な領域での経験を通して、お客様の悩みを解決していくための技術や事業のあり方を理解している。つまり、消費者と顧客の立場にたった“よきモノづくり”を支える、花王グループの企業理念「花王ウェイ」を理解し、実践していることが選任の理由だと言われました。

 その姿勢とグローバルな視点をもって、ESGを事業戦略に埋め込み、事業の中で実行される状況をつくること。ESGをベースにしてイノベーションを加速し、活動をグローバル化していくことが私のミッションであり、社長の思いでもあります。

――グローバルな視点で見たとき、花王の強みはどこにありますか。

マンツ 一つは、常に消費者を中心に置いていること。これは私たちの原点です。もう一つは、技術開発力。これがあってこそ消費者のニーズに応えることができるのです。

革新的な容器を世界に

――花王は「攻めのESG」を掲げています。具体的にどのような取り組みを進めていく考えですか。

マンツ ESGの視点で事業を強化できる側面は多数ありますが、なかでも重点分野として考えているのはプラスチック包装容器です。世界的にも海洋汚染につながるプラスチック廃棄物問題は急務を要する課題だと思っています。もともと花王では、1990年代から環境に配慮した包装容器の開発に取り組んできました。現在では大半のカテゴリーで詰め替え用をそろえており、主力商品の約8割は詰め替え用製品となっています。製品のすべてが本体容器と仮定した場合と比較すると、プラスチック使用量を約70%削減できていることになります。

 詰め替えやすく、容器内に液も残らないといったお客様が使いやすいデザインを追求したり、詰め替え用製品をそのまま使える「スマートホルダー」を開発するなど製品の形状も進化させてきました。こうした取り組みにより、日本において日用品を詰め替えるという行為が生活習慣として定着したことが何より大きいことだと思います。

■ 詰め替えパックがそのまま使用可能に
本体容器がいらないので、プラスチック使用量を大幅に削減でき、詰め替える手間もいらないため、さらなる詰め替えを促進。容器の中身も無駄なく使える
■ 開発中の新型容器
 
ごく薄いプラスチックフィルムのふちに空気を入れることで自立するボトルを開発。単一素材でリサイクルしやすい容器を目指す(写真:木村 輝)