聞き手/田中 太郎(日経ESG編集長)

日本企業として初めてCDPフォレストのAリストに選ばれた。サステナビリティを経営の重点に据え、付加価値の高い食品素材事業を追求する。

――CDPが2019年1月に発表した報告書で、森林分野(CDPフォレスト)において国内で初めてAリストに選定されました。

清水 洋史(しみず・ひろし)
不二製油グループ本社 代表取締役社長
1953年長野県生まれ。1977年同志社大学法学部卒業、不二製油株式会社入社。1999年新素材事業部長兼新素材販売部長、2008年経営企画部長、2009年常務取締役、2012年専務取締役などを経て2013年4月より代表取締役社長、2015年10月持株会社移行により現職(写真:山田 哲也)

清水 洋史 氏(以下、敬称略) 当社では以前から、企業は社会の公器であるという意識、社会貢献をおのずから考える意識が強く、ESG経営やSDGsにつながる地道な活動を続けてきました。

 パーム油の問題では、2004年にRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)に加盟し、認証油の調達を行っています。2016年には「責任あるパーム油調達方針」を公表し、搾油工場までのトレーサビリティ向上に努めるなど、サプライチェーンにおけるサステナブル調達に向けた取り組みを強化しました。インドネシア食品大手のパーム油農園・搾油工場で人権侵害が明らかになった際も、同社からの調達を迅速に停止しました。サステナブル調達の象徴的な取り組みとしては、人権や環境に配慮した農園運営会社UNITED PLANTATIONSとの合弁会社UNIFUJIを設立したことです(次ページ図④)。

 CDPフォレストでAランクの評価をいただけたのも、こうした取り組みによってESG経営の発想を長年にわたり追求してきた成果だと考えます。ただ、まだまだ全体のレベルが高いわけではなく、CSR担当者が突出して頑張っている面があります。世の中のためになる取り組みを本業で続ける会社として、不二製油は評価される“資格”はあるものの、社員には“自覚”が足りないと常々感じていました。CDPに代表される取り組みのレベルを高く維持することで、全体のレベルを向上したいと考えています。

■ パーム油と不二製油グループ
UNITED PLANTATIONS(UP)のパーム農園(左)。UPとの合弁会社UNIFUJIの工場(右)
(写真提供:不二製油グループ本社)
パームの収獲風景とパームの実。加工しやすく安価なパーム油は世界の植物性油脂原料で最大の生産量
(写真提供:不二製油グループ本社)

――「50年後に成長している会社」を目標にしているそうですが、そのため何が重要だと考えていますか。

清水 私は「歴史観」の話をよくします。当社は食品の原料である油脂を扱う製油メーカーとして、戦後に誕生した唯一の企業です。多くの製油メーカーは明治、大正期に創業しました。戦後は原料が戦前の実績による割当制でしたので、戦後生まれで規模も小さい当社は原料を買おうにも買えなかった。そこで原料を求めて海外に進出するとともに、付加価値の高い油に目を向けました。

 当時から付加価値が高かったのが、カカオの油と牛乳の油です。こうした付加価値の高い油の脂肪代替品をパーム油やヤシ油で生産し、技術力を磨いてきました。一方で、当時は家畜の餌にされていた脱脂大豆に含まれるたんぱく質に着目し、大豆たん白製品を商品化しました。その後、世の中の価値観が変わり、健康が注目される中で、当社が提供する脂肪代替品や大豆たんぱくが普及します。これが、不二製油がこの70年たどってきた歴史です。脂肪代替品や大豆たんぱくにここまで本気で取り組んでいる会社は、世界でも当社しかないと自負しています。

 価値観は変わるという歴史観のもとで未来を見据えると、人口増加で牛乳をはじめとする肉や魚の原料調達の危機が懸念される。そこで世界はサステナブル調達に向け動き始めたわけですが、サステナブルな時代になると、「サステナビリティ=代替食品」となります。当社は70年の歴史で代替原料の技術を磨いてきましたので、あとはそこに発想の転換を加えることでイノベーションを起こせます。世の中を変えるイノベーションを進めるためにも、本業で世の中に貢献できる会社であることの“自覚”が大切だと考えます。