人に見られて社員は育つ

――今のお話はESGのEとSにあたると思いますが、G(ガバナンス)についてどのようにお考えですか。

石坂 「見える化」ならぬ「見せる化」経営と呼んでいますが、外に見せること、外部から評価を受けることが、ガバナンス強化には重要です。

 経営基盤を強化するため、ISOを経営の柱に置いています。2003年に業界で初めて認証を取得し、現在はISO14001など7種類のISOを統合した「ISO7統合マネジメントシステム」として運用しています。実はこれらすべて、経営側の方針で取得したのではなく、事業拡大に合わせて社員の方針で取得したものです。

 当社の場合、毎日たくさんの見学者がいらっしゃいますが、これもある意味、外部から評価を受ける仕組みです。見学者からの質問に社員が答えられなかったら恥ずかしい。だから社員は一生懸命に勉強するんです。主体的になるんですね。社員の質が変わり、隠蔽体質が消え、社内に大きな価値が生み出されます。外部の目にさらす仕組みは、健全で透明性の高い経営を実現するツールであると同時に、社員を教育するツールでもあるわけです。

■ 工場の「見せる化」で社員の意識が向上
石坂産業では工場に見学通路を設け、外部の人々に積極的に工場を「見せる化」することで、従業員の意識向上につなげている(右上)。工場周辺の雑木林に、里山暮らしの価値を再発見できる環境教育フィールドを整備し、こちらも数多くの来場者を集めている(右下)
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――世界的に見るとESG経営は、投資家から厚い信頼を獲得することにもつながっています。

石坂 当社は企業として成熟度がまだまだ弱いと思っているので株式上場は考えていません。上場よりもまずは、社会から本当に必要とされる会社になっているか、社員が働く環境は本当に充実しているか、地道に改善していきたいですね。ESGというと遠くを見てしまう傾向がありますが、自社の活動を見つめ直せば、ESG経営のヒントや課題がたくさん見つかります。

 これからは「単独」目線ではなく、「融合」「共有」を重視した事業活動が求められるでしょう。自社の強みをアピールしつつ、規模を求めて独占しようとせず、様々なステークホルダーと協力し合うところから価値を生み出す。それこそがESG経営のあるべき形だと思います。