聞き手/酒井 綱一郎(日経BP社取締役副社長)
「計測・制御・情報」の技術でグローバルに事業を展開する横河電機。先進技術を提供し、お客様の事業を通じて“てこ”を利かせることでSDGsに貢献する。
――御社の製品や技術力がSDGsにどう貢献するのか、教えてください。

横河電機 代表取締役社長
1957年神奈川県生まれ。81年東京都立大学(現首都大学東京)理学部を卒業し、横河電機の前身の一つである北辰電機製作所に入社。2011年横河電機取締役(横河メータ&インスツルメンツ社長兼任)、12年取締役常務執行役員を経て、13年4月から代表取締役社長を務める
西島 剛志氏(以下、敬称略) 当社は、大規模設備を使ったものづくり、ライフラインを支える社会インフラの安定・安全操業を支え、生産性向上に貢献しています。例えば新興国の石油産業では、古い精製設備で稼働率が上がらず、国際的な環境基準も満たさないケースがあります。そこに当社の先進的なシステムを提供し、生産管理による無駄の排除や環境適合のために役立てていただいています。
当社の事業の特質について、私はよく「レバレッジ」という言葉を使います。当社の「計測・制御・情報」の知見や技術で様々な産業のお客様の省エネ、省資源、安全対策などをお手伝いし、経済価値拡大とCO2削減や地域の安全に貢献している。当社はお客様の支援を通じて、てこを利かせ、社会課題の解決に寄与しているといえます。
――2050年に向けたサステナビリティ目標を掲げています。
西島 ゴールとして「Net-zero Emissions(気候変動への対応)」「Well-being(すべての人の豊かな生活)」「Circular Economy(資源循環と効率化)」の3つを掲げています。「Net-zero Emissions」「Circular Economy」ではここまでお話ししたように、設備更新や生産管理によって省エネ、省資源、CO2削減などを実現した事例が数多くあります。

近年事業として育っているのが、安全で快適な暮らしを実現する「Well-being」のカテゴリーです。例えば医薬品。生きた細胞を立体的に捉える技術を基に、細胞への影響の観察から統計解析までを自動処理する創薬支援システムを提供しています。
また、生物を用いて生産し、薬効が高くて副作用が少ないバイオ医薬品が注目されています。人の勘や経験に頼らず、科学的なセンシングと条件制御により、バイオ医薬品の生産プロセスを最適化したいというニーズも高まっています。
当社の技術がバイオ医薬品やライフサイエンス、食品など多様な業種の生産性向上に寄与し、先ほど申し上げたレバレッジ効果で人々の暮らしを豊かにするという目標につながればと考えています。この事業をさらに加速するため、2018年4月にライフイノベーション事業本部を設置しました。