循環型社会見据えたプロジェクト

――2018年6月に迎えた100周年を機に9つのプロジェクトを進めています。このプロジェクトは何を目指しているのですか。

鈴木 次の100年に向け、人間にはどのような未来が待っているのか、当社はその未来にどうナビゲートできるのかを考え、物質や製品にとどまらず「人」を中心に化学を考える会社であり続けたいという思いを持っています。それを具体化するきっかけとして立ち上げたのが「THINK HUMAN PROJECT」と名づけた9つの実験的プロジェクトで、「人間らしさ」「繊維」「感性」「加齢」「環境」「住空間」「食」「移動」「超高齢社会」のそれぞれの視点から、未来に向けた分析と検証を始めています。

■ 帝人の実験的プロジェクト「THINK HUMAN PROJECT」
「FUTURE NAVIGATION」のメッセージのもと、これまでの化学の領域を越えて、未来の人間を支えるニーズやソリューションを生み出すことを目的としている
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――その「環境」の中に、南極点到達プロジェクトの支援があります。これはどのような取り組みですか。

使用済みPETボトルやプラスチックごみなどのリサイクル素材を使用した環境配慮型のソーラーカーにより南極点到達を目指すプロジェクト「Clean 2 Antarctica」(C2A)。オランダの冒険家エドウィン・テル・ヴェルデ氏と、学生や若き専門家たちにより展開される。帝人は、ソーラーカーの車体や構造材向けの軽量・高強度素材の提供、タイヤの設計解析をサポートする
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鈴木 EUが発表した資源循環政策「サーキュラーエコノミー」の考え方に共感し、欧州のグループ会社を中心に推進している取り組みの一つです。オランダ人冒険家エドウィン・テル・ヴェルデ氏が率いるチームが、リサイクル素材で作られた環境配慮型ソーラーカーで、再生可能エネルギーだけを利用して南極点到達を目指しています。このプロジェクトを支援することで、将来的にサーキュラーエコノミーを事業にどう結び付けられるかを考えるきっかけにしていきます。学生も含めた航海中のクルーにも、帝人が将来、循環型社会を実現するリーダー企業となるにはどうしたらよいか、アイデアを議論し、提出してもらいました。

――1990年代に社外取締役を導入するなど、ガバナンス先進企業として知られています。昨年夏にはGPIFが新たに設定したESG指数のすべてで選ばれました。ESGに配慮した経営をどのように進めていますか。

鈴木 ガバナンス重視の姿勢は、歴代トップから受け継いだ会社のDNAだと思っています。GPIFのESG指数に選ばれたことは光栄ですが、重要なことは、外部の評価結果を基に投資家と対話を重ね、自身を振り返り改善につなげていくことです。ESG投資の観点からも、社内でリスクをきちんと洗い出し、そのリスクとオポチュニティのバランスを見据えて、大きな機会をしっかりつかんでいくことが大切だと考えています。