相馬 隆宏

CO2排出量をゼロにする長期目標を掲げる企業が本腰を入れ始めた。再生可能エネルギーの利用拡大や調達先を巻き込んだ削減対策が進む。

 イオンは2019年から、中部電力と組んで太陽光で発電した電力の調達を大きく増やす。同社は2018年3月に公表した「イオン 脱炭素ビジョン2050」で、店舗が排出するCO2を2050年までにゼロにする目標を掲げた。店舗のCO2排出量のうち約9割は電力の使用によるもので、省エネを進めるとともに、再生可能エネルギーの大規模な利用が欠かせない。

長期目標の公表が呼び水に

 今回、再エネの調達先として期待をかけるのが、「卒FIT」と呼ばれる一般住宅だ。11月以降、住宅用太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り期間が満了(卒FIT)する家庭が出始める。資源エネルギー庁によると、2019年、卒FITする家庭は53万件あり、太陽光パネルの発電出力は合計200万kWになる。2023年には、165万件、670万kWまで拡大する見通しである。

 中部電力はこうした家庭向けに、買い取り期間満了後も太陽光で発電した電力を買い取るサービスを提供する。イオンは中部電力を通じて電力を調達。電力を提供した家庭には、イオングループの店舗などで買い物に使える「WAON(ワオン)ポイント」を進呈する仕組みである。

■ イオンは「卒FIT」の住宅から再エネ電力を調達する
再生可能エネルギーの利用を拡大するイオンは、「卒FIT」の住宅に活路を見いだす。写真は、中部電力管内にあるイオンモール名古屋茶屋

 イオンは、再エネの利用を増やせるだけでなく、集客につなげられる。今回の仕組みの対象は中部電力管内にある約1200店舗に限られるが、今後、他の地域の電力会社とも取り組むことを検討する。

 イオングループ環境・社会貢献部の金丸治子部長は、「脱炭素ビジョンを発表してから、(再エネの導入に関して)いろんなところから声がかかるようになった。中部電力もその1社だった」と話す。

 再エネを積極的に導入しているかどうかは、投資家の評価にも影響する。企業の環境への取り組みを調査、公表する英CDPは1月、2018年の結果を公表した。最高評価の「A」を獲得した企業とそうでない企業を分けたポイントの1つが、再エネの導入比率だったという。CDPの評価は投資家も注目しており、投資判断に関わってくる。

 そうした中、富士フイルムホールディングスは同月、再エネの長期目標を発表した。同社は使用するエネルギーのうち、約半分を電力会社から購入し、残り半分を自家発電で賄う。長期目標では、2050年度までに購入電力をすべて再エネ由来の電力に切り替える。

■ 富士フイルムホールディングスは購入電力の100%を再エネに
富士フイルムホールディングスは、購入電力をすべて再エネ由来電力に切り替える。自家発電についても「CO2ゼロ」の燃料に転換する

 現在、「卒FIT」する家庭からの調達を含めて、具体策を検討中だ。富士フイルムCSR推進部環境・品質マネジメント部長の中井泰史氏は、「再エネを活用した地域の地産地消プロジェクトなどに積極的に参画していく」と言う。

 「投資家の他に顧客からの要請を受けて、再エネに切り替えていく企業が今後増えてくる。いずれ争奪戦になるのであればできるだけ早く動くことが、事業を継続していく上で重要になる」(富士フイルムCSR推進部環境・品質マネジメント部マネージャーの久保和美氏)。