投資家に強みを訴求

 コードで定められたすべての原則に形式的に従うのではなく、自社流をアピールすることで、企業価値を高めようとする企業もある。

 改訂コードでは、取締役会にジェンダー(性別)や国籍などの多様性を求めている。ただし、女性や外国籍の取締役候補は少なく、多くの日本企業にとって課題となっている。

 コニカミノルタは、この原則に対して「説明」を選んだ。秘書室長兼カンパニーセクレタリーの愛宕和美氏は、「ジェンダーの多様性よりも、キャリアやスキルの多様性を優先すべきと考えている」と説明する。

 同社は、出身業種や経営経験、得意分野などを表にした「キャリア・スキルマトリックス表」をつくり、取締役のキャリアやスキルの多様性を重視した人選をしている。ガバナンス報告書には、こうした取り組みも併せて記載した。

 花王は、「独立社外取締役のみの定期的な情報交換」に関する原則に対して「説明」を選んだ。同社は、社外取締役や社外監査役が自主的に会合を開催しており、「こうしたコミュニケーションがとれている現状においては、自主的な開催を尊重する方が適切」とした。

 あずさ監査法人コーポレートガバナンスセンター・オブ・エクセレンスの和久友子氏は、「ガバナンス報告書は、監査やコンサルティングの入り口となる最も重要な開示資料」と言う。ガバナンス報告書の記述内容から企業に潜むリスクを探り、経営者との対話に活用している。

日産は「第三者の目」強調

 日産自動車は、2018年7月にガバナンス報告書を提出済みだったが、カルロス・ゴーン元会長の逮捕を受けて、12月25日に修正したものを再提出した。

 修正前のガバナンス報告書では、ゴーン元会長に一任していた役員報酬の決定手続きを「現行の仕組みで有効に機能している」としていた。後継者計画についても、代表取締役であるゴーン元会長が「責任を持ってあたっている」としていた。

 再提出した報告書では、従来の役員報酬の決定手続きを「撤回した」と記述した。後継者計画や経営者の選解任については、事件の発覚後に同社が設置したガバナンス改善特別委員会で検討するとした。いずれの原則についても、「独立した第三者の提言を適切に取り入れる」と記述している。

 日産は、指名委員会や報酬委員会など独立した諮問委員会を設置しておらず、1人に権限が集中したガバナンス体制が、経営トップの逮捕につながった。社外取締役を増やし、指名と報酬というガバナンスの中核に第三者の目を入れるという改善の方向性が、再提出されたガバナンス報告書から読み取れる。

 同社のガバナンス改善特別委員会は、3月末を目途に提言を発表する予定である。これを受けて6月の株主総会で新たなガバナンス体制に移行したい考えだ。

■ 主な企業の「エクスプレイン」(原則を順守しない理由の説明)
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 すべての原則に形式的に従う「フルコンプライ」を目的とするのではなく、原則の本意をくみ取って自社の強みを説明し、投資家や株主との対話を図る。企業価値の向上には、こうした取り組みが必要だ。