馬場 未希

欧州委員会がパリ協定に基づく長期戦略を示した。2050年までの温室効果ガスの大幅削減と経済成長に意欲を見せる。

 「パリ協定が言及した1.5℃目標を目指すべきだと考える」。欧州委員会エネルギー総局エネルギー政策担当のミーガン・リチャーズ局長は話す。

 パリ協定は、今世紀末における産業革命前と比べた世界平均気温の上昇を2℃より十分に低く抑え、1.5℃に近づける努力を締約国に求めている。また同時に、2050年など長期の温暖化対策の戦略を2020年までに策定することを求めている。

 これに応えるため、欧州委員会は2018年11月、新たな温暖化対策の長期戦略を発表した。2050年にEU(欧州連合)の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする方針を示した。ここでいう実質ゼロは、製鉄など一部の産業や運輸、農業の排出を認め、森林などによるCO2の吸収とCO2回収貯留(CCS)技術により、削減の難しい産業からの排出を相殺することだ。

古い住宅で省エネを徹底

 様々な技術と対策を組み合わせる。中心となるのが省エネだ。新技術によって域内のエネルギー効率を2005年比で2倍に高めると言及。テコ入れが必要になるのが建築物だ。欧州には数百年前に建てられたエネルギー効率の低い住宅が多く残存し、2050年もその多くが使われるという。省エネ改修を域内で活発にするため、補助金の提供や改修を担う人材育成を支援する。

 また、2050年までにエネルギー消費の電化を徹底し、電力の8割を再生可能エネルギーにする。欧州委員会の分析によれば、2050年のエネルギー消費に占める石炭の割合をほぼゼロにし、石油製品と天然ガスの消費量も減らす。8割を再エネにして残りを原子力などで賄う。運輸には再エネで造った水素を活用する。

 エネルギー転換にはGDP(国内総生産)の2.8%、年間5750億ユーロの大規模な投資が必要になる。現状の投資規模はGDPの2%で、年間最大2900億ユーロの追加投資を要する。一方、経済成長と雇用創出にプラスとなり、長期戦略による低炭素化を進めない場合と比べてGDPが2%増えると試算した。また、燃料の輸入コストを2031〜50年に2兆~3兆ユーロ削減できると見積もる。

■ EUは1.5℃実現の道筋を試算した
欧州委員会が試算した、2050年にEU域内の排出量を実質ゼロにする温室効果ガス削減シナリオ
(出所:欧州委員会「A Clean Planet for all」)
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 日本も、議長国として開催する20カ国・地域(G20)サミットまでに長期戦略を策定する。経済成長を両立する戦略を示せるか、注目される。