田中 太郎

投資家から見て日本のESG投資が拡大するには何が重要なのか。BNPパリバ証券のESGアナリスト、中空麻奈氏と木畑大輔氏に聞いた。

――企業や国などが発行する債券の信用力を分析するクレジットアナリストの中空さんが、なぜESGを担当しているのですか。

中空 麻奈
BNPパリバ証券市場調査本部長、チーフ クレジット アナリスト、 チーフ ESG アナリスト。野村アセットマネジメント、モルガン・スタンレー証券、JPモルガン証券などでクレジットアナリシスに従事。2011年からBNPパリバ証券市場調査本部長、2018年7月からチーフ ESG アナリストを兼務。「日経ヴェリタス」の債券アナリスト・エコノミストランキングでも上位に選ばれている
(写真:鈴木愛子)

中空 麻奈 氏(以下、敬称略) リスクを分析することが共通しているからです。社会や経済の構造が大きく変化しています。今後のビジネスを考える上でESGは非常に重要な視点です。取り入れなければ大きなリスクになります。

――日本のESG投資が大きく伸びています。ESGに関連した非財務情報の重要性が認識されてきたのでしょうか。

中空 もちろん、財務情報の意味がなくなったわけではありません。しかし、度重なる最近の不祥事は、ほとんどがG(ガバナンス)の視点の欠如に起因していると思います。

 ある意味、日本ではこれまで、きちんと説明しなくてもあうんの呼吸で分かり合えるという面がありました。しかし、グローバル化が進む中で日本企業もGの部分をしっかり言葉にして説明し、さまざまなリスクを排除できることを示さなくてはならなくなっています。その意味で非財務情報の重要度は高まっていると感じています。

木畑 大輔 氏(以下、敬称略) ESGでは今、気候変動が注目されています。「座礁資産」(市場や社会の変化によって価値が大きく毀損する資産)という言葉がありますが、今まで投資できていたものができなくなってくる。それをどんな基準で見るのかというと、財務ではなくCO2排出量などの非財務情報です。将来を見据えた投資を考えると非財務情報が重要になっています。

プロセスはまだ不明確

――日本でも、投資家にとってESGはもはや当たり前になっていると指摘する専門家もいます。

木畑 大輔
BNPパリバ証券市場調査本部ESGアナリスト。2004年からクレディ・スイス証券株式調査部にて調査レポートの作成に従事。2011年BNPパリバ証券入社後、株式調査部で日本語リサーチプロダクションを立ち上げ、スーパーバイザリー・アナリスト業務を担当。2018年の市場調査本部ESGリサーチチーム発足に伴い、ESG専任のアナリストとして調査を開始
(写真:鈴木愛子)

木畑 企業も、投資家も、やっているところとそうでないところに大きな差があると思います。投資家サイドはインテグレーションという言葉をよく使いますが、ESG評価機関の評価を買ったり、自社のアナリストがエンゲージメントをしたりした情報を統合してインテグレーションと呼んでいるのだと思います。

 ただ、実際にはどういうプロセスで、どのような割合でESG要素を取り込んでいるのかというと全くのブラックボックスです。インテグレーションという言葉が正確に何を意味しているのか、ESG投資の定義は何なのかはまだ曖昧な部分が残っています。

中空 ESGの定義や基準がはっきりしないという問題は確かにあります。ただ、逆に柔軟な部分が必要な面もあります。というのも、例えば技術の進化によって何が環境に良いのかは変わります。

――クリーンディーゼルはエコカーとは見られなくなってしまいました。

中空 そうです。基準や定義は見直し続ける必要があります。