まずはEから進める

――気候変動で言うと、日本企業もTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示に力を入れています。

中空 TCFDは今注目されています。ESG全体で見ると、S(社会)とGの評価測定は非常に難しいと思います。E(環境)から入るのは順番として正しいのではないでしょうか。CO2の排出量はきちんと測れるし、価格に換算して収益にどれだけのインパクトがあるのか分かりやすく示せます。

――Eの分野から経験を積み上げていけるということですね。お金に換算することが重要だすると、カーボンプライシングなども必要になりますか。

中空 そうですね。もちろん企業にばかり過重な負担をかけるのは良くないと思いますが、環境負荷を改善するにはどれくらいの社会的損失を出しているのかを知ってもらわなければなりません。それを価格にするのが、炭素税やカーボンプライシングです。避けては通れない話だと思います。

――お金にすれば誰にとっても分かりやすいです。

中空 ESGが根付くには2つしかないと思っています。お金の流れをつくるか、がちがちに規制するかです。規制で縛り付けて企業の行動を変えるのは限界があります。お金の流れをつくるという意味では、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のESG投資は大きかったのではないでしょうか。

――グリーンボンドの発行が増えています。投資した企業がそのことを発信することも多く、発行する側と買い手の双方で盛り上がっています。しかし、用途が限定され、発行に手間がかかるのに、なぜ選ばれるのでしょうか。

中空 証券業界としては、低金利下で資金需要が低迷する中で、新しい商品として力を入れています。企業に対しては、グリーンボンドを発行すればESG投資家という新しい買い手がつきますと説明しやすいのだと思います。企業にとっても、グリーンボンドを発行することによって企業としての姿勢を表明できます。しかも、今はグリーンボンドの発行に対して国からの補助があります。

 今後、グリーンボンドの真価が認められるようになると思います。例えば仮にグリーンボンドと普通社債の双方を発行している企業が債務不履行に陥ったとします。それなのにグリーンボンドだけ売買価格が変わらない、あるいは値崩れが小さいという状況になれば、グリーンボンドに対する企業のインセンティブは相当に高まると思います。

――そんなことがあるのですか。

中空 グリーンボンドは使途が限定されているので、そのプロジェクトがうまく回転していたとしたらあり得ないことではないです。グリーンボンドとそれ以外で差がついたときに本物になるでしょう。

――それはいつですか。

中空 まだ先ですが、私はグリーンボンド市場は広がると確信しています。温暖化対策には莫大な資金が必要です。ファイナンスがつかなければ、「2℃目標」も「1.5℃目標」も現実のものにはなりません。莫大な資金を集めるには株式ではなく、債券が向いています。グリーンボンドの市場確立は、気候変動問題解決の肝だと思っています。