藤田 香

世界最大の機関投資家GPIFが、債券でもESG投資に本格的に踏み切った。世界銀行のグリーンボンドなどに投資、国内のESG債の市場拡大に弾みがつきそうだ。

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、債券へのESG投資に本格的に乗り出した。2019年4月、世界銀行と国際金融公社(IFC)が発行した複数のグリーンボンドに合計5億ドル(約545億円)を投資したと発表した。これまで株式が中心だったESG投資を債券にも広げた。

 GPIFは約150兆円の運用資産のうち株式と債券に半分ずつ投資している。株式ではESGインデックスを用いた本格的なESG投資を2017年から実施する一方、債券へのESGの組み込み手法も探ってきた。2018年4月に世銀と共同でまとめた報告書を基に、今回、環境に配慮した事業に資金を充てるグリーンボンド、社会に配慮した事業に充てるソーシャルボンド、環境と社会の両方に貢献する事業に充てるサステナビリティボンドなどのESG債への投資を有効な投資手法の1つだと判断した。

 グリーンボンドは国や自治体、企業、国際機関からの発行が急増している。2018年の世界の発行額は1673億ドル。発行体として実績があるのは世銀グループだ。世銀やIFCのグリーンボンドは信用格付けも高い。世銀とIFC側からGPIFの委託運用会社に提案があったことを受け、6社が投資を開始した。

■ 世界のグリーンボンドの発行額
世界のグリーンボンド発行額は年々増加し、単年で1600億ドルを超える。国や地方自治体、企業、国際開発金融機関などが発行している
(出所:Climate Bonds Initiativeのデータを基に環境省作成)

 世銀のグリーンボンドは途上国政府の再生可能エネルギーやインフラ整備、IFCのグリーンボンドは資源効率化など民間への融資に充てる。

 GPIFが債券へのESG投資を始めるに当たって、気にしたのはリターンだ。世銀財務局駐日代表の有馬良行氏は、「世銀とIFCが発行するグリーンボンドの多くは外国国債より金利が高い。償還期間が長く流動性は低いが、年金基金は突発的な支払いが必要ないため長期投資を目指すGPIFの方針に沿う」と話す。

 たとえ利回りが通常の債券と同等でも、資金使途が環境や社会に貢献する事業に限定されるためリスクを低減できる。信用格付けが高いこともあり、世銀債やIFC債はリターンにつながると判断したようだ。

市場拡大の起爆剤に

 GPIFがESG債への投資にかじを切ったことで、「これまで世銀債やIFC債に関心がなかった学校法人など新たな投資家からも問い合わせが増えている」と有馬氏は言う。

 今後GPIFは世銀債に限らず、国際機関を中心にESG債の銘柄を増やすとみられる。日本のグリーンボンド発行額は5240億円(2018年)とまだ小さいが、GPIFの投資により国際機関や企業、自治体のESG債の発行にも弾みがつくだろう。