相馬 隆宏
花王は2030年を目標とするESG戦略を策定、公表した。企業価値のさらなる向上につなげられるか、真価が問われる。
花王が2019年4月22日に公表したESG戦略「キレイライフスタイルプラン」は、19の目標を定めている(下の図)。
生活者目線のESG

「生活者の立場に立った身近に感じられるESGで、花王の存在感を出していきたい」(澤田道隆社長)という考えが色濃く表れているのが、「社会的課題に対応し、生活者の暮らしや社会で共感を得られる、存在意義のあるブランドの比率を100%にする」「ライフスタイルに大きく、ポジティブなインパクトを与える製品を10件以上提案する」──、といった目標だ。
花王が環境や社会課題の解決につながる商品を開発し、生活者がこれを選択することによって、快適な暮らしを送れるだけでなく、環境や社会に貢献できるようにする。
これを具現化した商品が、4月に発売した衣料用洗剤「アタック ZERO(ゼロ)」だ。汚れをしっかり落とし、かつ付きにくくするという機能面での付加価値に加えて、環境にも配慮している。
新開発の洗浄基剤(界面活性剤)「バイオIOS」は、アブラヤシの実からパーム油を取り出す際の搾りかすを原料にする。新興国の人口増加で洗剤原料の需要拡大が見込まれる中、持続可能な調達につながる。
現在、開発中のプラスチック製容器「エアインフィルムボトル」は、従来のボトル形容器と比べてプラスチックの使用量が約7分の1と大幅に少なく、単一素材のためリサイクルもしやすい。プラスチックごみによる海洋汚染の解決が期待できる。
「戦略を立案し、世の中に示すだけでなく、確実に実行していく」(ESG部門の上山健一・副統括)ため、推進体制も強化している。取締役会の下に、ESGに関する最高意思決定機関のESG委員会を設置。取り組みの進捗を管理するESG推進会議を新設した。多様な視点を入れるため、社外の有識者から成るアドバイザリーボードも置く。
