半澤 智

注目されたLIXILグループの株主総会は、株主側の提案がすべて可決された。株主は社会問題を経営リスクと捉え、企業にESGの取り組みを迫っている。

 「それ見たことか!」。LIXILグループの株主総会の会場から出てきた株主が高潮した顔で叫んだ。会社側と株主側で続いていた対立は、現経営陣に「ノー」を突き付ける株主側の勝利となった。

 日本の株主総会では、株主提案は否決されるケースがほとんどだが、今回は社長を含む全経営陣の株主提案が可決されるというかつてない結果になった。不透明なガバナンスに株主が異を唱え、株主が経営に積極的に関与する。こうした時代への転換点となりそうだ。

 前CEO(最高経営責任者)の瀬戸欣哉氏を含む株主提案候補8人は全員選任された一方で、会社提案候補8人のうち選任されたのは6人。株主総会後の取締役会で、株主提案から取締役に選出された瀬戸氏をCEOとすることを決めた。

 株主総会翌日の同社の株価は前日終値比一時19%高となり、年初来高値を記録した。株主提案に賛成票を投じた英ポーラー・キャピタル・パートナーズの小松雅彦・日本代表は、「海外投資家は、LIXILの行方を日本のガバナンス改革の本気度を測る事例として注目していた。結果が好感を持って捉えられた」とみる。投資家は、同社のガバナンス改革が業績向上につながると期待する。

「ワンマン経営ではないのか」

 不透明なガバナンスは許さない─。6月にピークを迎えた各社の株主総会では、ガバナンスに関する株主質問が相次いだ。

 トヨタ自動車が6月13日に開催した株主総会では、株主が「創業家出身の豊田章男社長はワンマン経営なのではないか」と疑問をぶつけた。小林耕士副社長が、「社長は現場社員とのコミュニケーションを重視しており、ワンマンではない」と答えて理解を促した。

 富士通が6月24日に開催した株主総会では、株主が取締役会議長に就任予定の阿部敦氏に「議長として取締役会をどのように運営していくのか」と問いかけた。阿部氏は、「取締役の多様な意見を引き出し、まとめていくのが私の仕事」と説明した。

日産自動車は、指名委員会等設置会社への移行を決めた
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 日産自動車は6月25日、指名委員会等設置会社へ移行する定款変更案を可決した。社外取締役をこれまでの3人から7人に増やし、役員人事や役員報酬は、指名、報酬、監査の3委員会が決める。西川廣人社長は、「経営レベルでのガバナンス改革を迅速に進めていきたい」と語り、ガバナンス改革に意欲を示した。

 東芝は6月26日、取締役候補12人のうちの10人を社外取締役にする議案を可決した。社外取締役のうち4人は外国籍で大株主でもある投資ファンド出身者も含まれており、機関投資家の意向を反映した格好だ。

 投資家が積極的に経営に参加する動きは、今後も強まりそうだ。投資家と対話を重ねる努力がこれまで以上に求められる。

■ 「ガバナンス」に関する主な株主質問と会社回答
CEO:最高経営責任者
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