相馬 隆宏

イオンは、太陽光発電事業者に店舗の屋根を貸し、発電した電力を調達する。店舗のCO2排出量を実質ゼロにする「脱炭素」実現の切り札となるか。

 「再生可能エネルギーを調達するのに、現時点で最も有力な方法だ」─。イオン環境・社会貢献部部長代行の鈴木隆博氏はこう話す。再エネの利用拡大に向けて、同社が2019年から本格的に導入する方法は「PPA(電力販売契約)」と呼ばれる。

 太陽光パネルの設置場所として店舗の屋根を発電事業者に貸し、発電した電力を買い取る仕組みだ。発電事業者がパネルの調達から設置、運用・保守まで手がけるので、初期投資がかからず、運用コストの負担もない。通常の電力調達と同様に電力料を支払うだけで済む。電力料は、「再エネ由来ではない従来の電力の料金とほぼ同等」(鈴木氏)だ。

「卒FIT」電力と両輪

 イオンは2018年3月に公表した「イオン脱炭素ビジョン2050」で、店舗が排出するCO2を2050年までに実質ゼロにする目標を掲げている。店舗のCO2排出量の約9割が電力の使用によるものだ。省エネで減らせる余地は限られており、再エネの大規模な利用が欠かせない。

 PPAはその切り札になる可能性がある。現在、発電事業者4社と交渉を進めており、12月にもイオンタウン湖南(滋賀県湖南市)で「屋根貸し」による発電を開始することが決まっている。鈴木氏は、「最低200カ所でPPAを導入したい」と言う。

約10万m2に及ぶ広大な敷地に41店舗が集まるイオンタウン湖南。建物の屋根に発電容量約1200kW分の太陽光パネルを設置し、年内にも発電を開始する
(写真:イオン)

 PPAと並ぶもう1つの柱が、「卒FIT」と呼ばれる一般住宅からの調達だ。11月以降、中部電力を通じて、住宅用太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り期間が満了(卒FIT)する家庭から電力を買い取る。ただし、この方法は各家庭が電力の販売先を複数の選択肢の中から選ぶため、調達量が読みにくい。

 イオンは、電力を供給してくれた家庭には、イオングループの店舗などで買い物に使える「WAON(ワオン)ポイント」を進呈することで、卒FIT電力をできるだけ多く調達する戦略を取る。再エネの利用を増やすとともに集客力を高め、本業の売り上げ増にもつなげる。

 再エネの利用拡大は、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する投資家や取引先の評価にも影響する。投資家や取引先の要請に応えるべく、電力需要を全て再エネで賄うことを目指す国際イニシアチブ「RE100」へ参加する企業は増えている。再エネの調達コストが世界的に見て割高とされる日本で、いかに低コストで調達するか、企業の知恵が問われている。