藤田 香

英国の金融シンクタンクが日本の大手水産会社41社の評価に乗り出した。持続可能でない漁業管理は、投資家に財務や信用リスクをもたらすとした。

 投資家が注目するテーマとして、企業の温暖化対策の次に自然資本の保全、中でも魚が浮上している。英国の非営利金融シンクタンク「プラネット・トラッカー」は日本の水産業の評価に乗り出した。様々なリスクが潜在し、投資家や金融機関も財務や信用上のリスクを背負うという調査結果を2019年9月中旬に発表する。

 プラネット・トラッカーは、温暖化が金融にもたらすリスクを評価する「カーボン・トラッカー」と同じ英インベスター・ウォッチ・グループのシンクタンク。金融システムに生態系の価値を組み込み、資金の流れをつくることを目指す団体だ。

プラネット・トラッカー「Perfect Storm」

 魚に焦点を当てたのが、「フィッシュ・トラッカー」プログラムだ。世界の水産会社の財務パフォーマンスを評価した報告書「Empty Nets(空っぽの網)」を2017年に発表したが、今回は日本の水産大手41社に絞り持続可能性リスクを評価した報告書「Perfect Storm(破滅的な事態)」を発表する。

 日本の漁業生産量は、1985年の1280万tから2017年に430万tへと減り、世界シェアも13.4%から2.2%に激減した。しかし、輸入額や売り上げは大きい。41社の時価総額は合計1340億ドル(約14兆円)に上り、世界の水産業に与える影響が大きいことから日本に焦点を当てた。

年間5兆〜8兆円の損失

 報告書は日本の水産業が抱えるリスクを指摘した。例えば、水産資源や漁獲量が減少し、漁船が沖合に出ることが増え、操業コストの増加や収益の悪化を招くリスクが予想される。また、資源管理や、いつどこで取られた魚か確認するトレーサビリティ確保とその開示が不十分なことによる財務や評判のリスクがある。世界の水産業は持続可能でない漁業管理で毎年510億〜830億ドル(5兆4000億〜8兆8000億円)の収益を失っていることも指摘する。

■ 日本の水産業が投資家や金融機関に及ぼすリスク要因
出所:プラネット・トラッカー「Perfect Storm」を基に本誌作成

 放置すれば投資家や金融機関にも財務や信用上のリスクをもたらす。サプライチェーン情報の開示が不十分な場合、過剰漁獲リスクを避けて収益を上げているかといった正しい投資判断ができない。一方、日本の水産会社が漁業認証の取得や情報の開示を進めれば、リスクが減少して収益が増える可能性があるとし、投資家や銀行も持続可能性の担保を企業に求めるべきだと提案している。

 欧州では英アビバ・インベスターズなど持続可能な水産業に関心が高い機関投資家もいる。投資家からの要請を受け、水産資源をはじめとする自然資本への配慮が進みそうだ。