馬場 未希

欧州委員会は投資家に対し、パリ協定に貢献する投融資を求める。CO2排出がより少ない事業に資金を流すため、独自の基準を策定する。

 欧州委員会は「サステナブルファイナンス(持続可能な投融資)」の実現を促す仕組みをつくる。なかでも持続可能な事業をEUが独自に分類する「タクソノミー」は、投資家や金融機関による投融資基準となる。

 2019年6月18日に欧州委員会・技術専門家グループ(TEG)が発表したタクソノミー最終案について、TEGの一員でもある気候債券イニシアチブ(CBI)のシーン・キドニーCEO(最高経営責任者)に尋ねた。

――タクソノミーの検討状況は。

シーン・キドニー
気候債券イニシアティブ(CBI)CEO EUサステナブルファイナンス 技術専門グループ タクソノミー作業部会(写真:北山 宏一)

シーン・キドニー 氏(以下、敬称略) 2020年初頭には欧州連合(EU)の規制としてタクソノミーの活用が導入され、企業による情報開示報告の要件になる見通しだ。

 欧州議会は2019年3月、金融機関や投資家に対し、気候リスクを含むESGリスク開示を求める規則に合意した。タクソノミーは投資家が気候リスクを抱える事業を判別し、投融資を判断する助けになる。

 今後、EU域内に限らず各国の産業界や投資家の意見を集約していく。来日したのもそのためだ。

――なぜタクソノミーが必要か。

キドニー グリーンボンド(環境債)やサステビリティを目的とする金融商品市場が急拡大しているのは良いことだ。だが、欧州委員会は、パリ協定による気温抑制目標の達成に真に貢献できる商品や事業に投資が集まっているかや、サステナブル投資が客観的、科学的な知見に基づいているかどうかを懸念している。

 今の金融市場には、誤った投資判断を回避する正しい共通理解が欠けている。タクソノミーはこれを補い、適切な投資判断を助ける。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などの報告書によれば、気候変動を抑えるには石炭と天然ガスの火力発電の新設は望ましくないという。そこでタクソノミー案は、電力のCO2排出量として発電量1kWh当たり100gを閾値とし、これ以下を認めるとした。石炭火力やガス火力はタクソノミーの対象外だ。

 閾値を下回ることは世界のエネルギー業界にとって大きな挑戦となろう。ただ、CO2回収・貯留(CCS)とガスと組み合わせれば可能だろう。

――2018年12月発表の「タクソノミー原案」は原子力発電も対象外だった。

キドニー 2019年6月発表の最終案では、「原発は低炭素電源」と明示した。だが、原発には気候変動やCO2排出とは関係のない課題もある。安全性と放射性廃棄物、そして廃炉だ。

 今は原子力を否定しないがタクソノミーの対象にもしていない。今後の議論で、事故などリスクが大きくなった場合の対応を明確にすべきだ。

――投資家が投資判断に使う方法として、タクソノミー対象事業の売上高比率を基にした企業格付けが考えられる。

キドニー それは100%あり得る使い方だ。多くの投資家が自発的に、そのように使いたいと言っている。

 投資家は気候リスクの開示ルールに基づいて情報開示しなければならず、投資先企業に事業構成の見直しを要請している。欧州ではその基準がタクソノミーになる。