藤田 香

住宅大手の積水ハウスは海外投資家との対話の強化に乗り出した。ZEHの海外展開、男性社員の育休義務化など強いコミットメントを打ち出す。

――海外投資家との対話を強化していると聞いた。

阿部 俊則
積水ハウス 代表取締役会長
(写真:中島 正之)

阿部 俊則 氏(以下、敬称略) 当社の株の23%は海外投資家が所有しており、対話の重要性を感じている。夏から秋に欧米の投資家を回るが、2018年は気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)にも参加し環境の取り組みを語った。10年来IR活動をしてきたが、この2〜3年で投資家は変わった。従来は配当の話ばかりだったが、今はESGの話で目が輝く。ESG経営でなければ投資しない投資家も現れた。

――投資家に企業価値向上のストーリーを示せているか。反応はどうか。

阿部 経営者は具体的な数字を盛り込んだ目標を示し、コミットメントを達成する強いリーダーシップを示すことが大切。2008年から、2050年の脱炭素の目標を掲げ、商品を展開してきた。ZEH(ゼロ・エネルギー住宅)比率は79%と高く、2019年は80%を上回る勢いだ。国内住宅業界では最初にRE100(使用電力を100%再生可能エネルギーにするイニシアティブ)にも加盟した。

 海外ではまだZEHを販売していないが、最近米国やオーストラリアでZEHのモデルハウスを建てた。将来ZEHが間違いなく標準になるだろう。当社の環境戦略は事業戦略と一致している。環境戦略を大きく打ち出す前の2008年には1棟当たり3164万円だった平均単価は、2018年、3875万円に上昇した。営業利益率も4.9%から8.8%になった。こうした戦略を投資家に話す。

 CDP気候変動でAリスト、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックスのワールドに選定されてきた。それで株価が上がったかは分からないが、長期的には効果があるだろう。住宅は顧客サポートが50〜100年と長く、会社の長期的成長は顧客への責任を果たす意味でも重要。ESG投資と親和性がある。

ガバナンス改革は4〜5合目

――社内にESGは浸透してきたか。

阿部 「S」の働き方改革や女性活躍、障害者への配慮、外国人労働者の人権にも取り組んでいる。昨秋、男性社員に1カ月以上の育休取得を義務付ける制度を導入し、大きな反響があった。3年離職率は11%台と業界では低い。多くの職人を抱え施工力が高いのも武器だ。社員や職人も重要なステークホルダー。ここをしっかり固めないと将来はない。

 こうした人材への投資は一見コストがかかりそうだが、長い目で見たらサステナブルだ。2500億円の利益を上げようと無理な経営をしていたら実現できないが、2000億円の利益で着実な経営をするなら実現できる。社員が疲弊したら意味がない。

――ガバナンス改革は何合目か。

阿部 4〜5合目だろうか。誠実で崇高な倫理観「インテグリティ」を柱にしたガバナンス改革を進めている。社外取締役や女性役員の比率向上に取り組む。譲渡制限付き株式報酬制度の導入や報酬開示は実施済みだ。スピード感を持って進めたい。