40社が15億ドルを投資

 AEPWの取り組みは大きく2つに分かれる。1つは、参加企業が資金を拠出し、NPO(非営利組織)や研究機関などを支援すること。①インフラ整備、②イノベーション、③教育・啓発、④清掃の4つを目的として、5年間で15億ドル(約1600億円)を投じる計画である。

 もう1つは、各企業がそれぞれでプラスチックごみの削減につながる取り組みを推進する。例えば、三菱ケミカルは、生分解性プラスチックのような新素材の開発などに5年間で累計3750万ドル(約40億円)を投じる。

 AEPWに参加する米プロクター・アンド・ギャンブルは2018年4月、2030年までにすべてのパッケージをリサイクル・リユース可能なものにすると宣言した。チーフ・サステナビリティ・オフィサーのヴァージニー・へリアス氏は、「プラスチックのリサイクルを普及拡大させるためには、再生プラスチックの市場をつくることが重要だ。当社のようなメーカーが再生プラスチックをパッケージに使うと表明して需要をつくることで、回収インフラの整備や供給能力の拡大につながり、経済合理性も出てくるだろう」と言う。

 「複数の種類のプラスチックから成る複合材料の設計をどうするかがこれからのテーマになる。素材の性能を落とさずにリサイクルしやすいものにできるか。課題を一つひとつクリアしていく」(越智社長)

株主も海洋プラ対策を要請

 化学メーカーにとって、プラスチックのマイナス面ばかりに注目が集まると需要の減少につながるリスクがある。パッケージなどにプラスチックを使う日用品や食品メーカー、それらの商品を販売する小売業も、消費者や投資家の厳しい目にさらされている。プラスチックごみ対策を怠れば、ブランドイメージや株式市場での評価を下げかねない。

 例えば、企業に社会的責任を求める米国のNGO(非政府組織)「アズ・ユー・ソウ」は2018年6月、日用品や食品メーカーなどに海洋プラスチック問題への対応を要請する投資家連合「プラスチック・ソリューションズ・インベスター・アライアンス」を発足させた。物言う株主でもあるアズ・ユー・ソウは2019年6月、大手スーパーマーケットチェーン米クローガーの年次株主総会で、すべてのパッケージをリサイクル可能にするよう求める提案を2018年に続いて出した。株主の39%がこの提案を支持し、2018年の29%から増えたという。

 一方、海洋プラスチック問題に積極的に取り組めば、リスクを機会に変えられる可能性がある。日本政策投資銀行産業調査部の福井美悠・副調査役は、「企業の長期的な成長力や企業価値を評価するに当たってESGの要素が無視できなくなっている。そうした中で海洋プラスチック問題を見ると、日本の産業界は優位性が高い。官民が連携したリサイクルシステムやリサイクル技術を有していることは、今後予想されるグローバルな環境規制の強化への耐性がある」と話す。

 2019年6月に大阪で開催された主要20カ国・地域(G20)首脳会議で、2050年までにプラスチックごみによる新たな海洋汚染をゼロにする目標に合意した。日本が培ってきた環境技術やノウハウを世界に輸出できるか。海洋プラスチック問題での成果が試金石となるかもしれない。