日本の炭素価格、40ドル見込む

 報告書の予測を見てみよう。石炭火力発電については、2030年頃までに一部の国が新設をやめ、既存の設備を含めて段階的に減ると予測している。日本もこれに該当するという。

 2030年以降は、インドや中国を含む新興国などで石炭火力の利用が段階的に減る予測である。2020年に世界でCO2を減らし始めるIPCCの1.5℃シナリオや、IEAの持続可能な開発シナリオ(SDS)よりも現実的と言える。

 一方、世界で再生可能エネルギーが増えると予測。加えて中国やインド、日本で、原子力発電の利用が現状に比べて増えるという。

 日本については、環境大臣が石炭火力発電の新設を容認しなかったことや、商社が石炭火力事業の縮小を発表したとの報道が予測の根拠になっている。原発は、2018年度までに9基が再稼働し、エネルギー資源の輸入依存を減らすなどの必要性から利用率が上がると見込む。

 炭素価格についても予測している。今、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、社会や経済が脱炭素化する「移行」のリスクを洗い出すため、多くの機関投資家や金融機関、企業がシナリオ分析に着手している。この分析の際、将来動向を予測しづらいのが炭素価格だ。

 報告書は、2030年までに導入する国でCO2の排出1t当たり40〜60ドル、日本では同40ドルと見込む。IEAの持続可能な開発シナリオが2025年に同63ドル、2040年に同140ドルと高額な炭素価格の導入を見込んでいるのを踏まえると「報告書はより現実的な価格を挙げた」(柴田シニアコンサルタント)。

 将来の経営戦略を練るシナリオ分析の際、現実との差が大きい1.5℃や2℃のシナリオだけを使うことに躊躇する企業もある。PRIの予測を現実的シナリオとして、1.5℃や2℃のシナリオと併用するケースが増えそうだ。