企業の実情とすり合わせを

 環境省の中澤氏は、「ポスト愛知目標の草案は数値目標を多く盛り込んでいるのはよいが、ベースラインや測定方法が見えにくく、生物多様性向上にどう寄与するか確認が必要」と話す。野心的な数字が並んでいるが、根拠が分かりにくく下手をすれば数字の羅列になりかねない。

 また、ポスト愛知目標は締約国が果たすべき目標であるものの、目標達成に企業や消費者などの巻き込みを意識している以上、もう少し企業の実情と合わせた目標設定の必要性を感じる。先進的な企業は森林産品や畜産物、水産物の持続可能な調達に取り組み、CDPウォーターやフォレストで情報開示している。企業活動が自然資本に及ぼす影響を「自然資本プロトコル」を使って測定し、開示している企業もある。投資家もこうした情報への関心を高め、投資に活用している。

 このように企業が既に取り組んでいる活動とポスト愛知目標をリンクさせて記述する必要がある。例えば認証製品の比率をどの程度上げることがポスト愛知目標の求める生物多様性の損失抑制や長期目標のノーネットロスにつながるのか。両者をつなぐ“翻訳”を加えることで目標の持つ意味や達成の道筋が見え、企業の活動が促進されるに違いない。ポスト愛知目標が国連や国だけの取り組みに終わらぬよう、COP15に向けた草案の改訂で、企業活動と橋渡しする目標作りが求められる。

[クリックすると拡大した画像が開きます]
[クリックすると拡大した画像が開きます]
ポスト愛知目標の目標5の指標案には認証製品の活用も盛り込まれている。左はFSC認証紙を使用したキリンのビールのパック、右はMSC認証の魚を使用した日本マクドナルドのバーガー
(写真:キリン(左))