半澤 智

ESG専門チームを設け、アクティブ投資にESG要素を組み込む。日本企業は、社外取締役の活用や取締役の多様性に課題があると指摘する。

――アバディーン・スタンダード・インベストメンツは、資産運用額が約72兆円のアクティブ投資中心の運用会社だ。ESGについてどのように捉えているか。

ユアン・スティアリング
英アバディーン・スタンダード・インベストメンツ スチュワードシップ ESG投資 グローバルヘッド(写真:鈴木 愛子)

ユアン・スティアリング 氏(以下、敬称略) 我々の目的は、顧客の中長期のリターンを増やすことだ。その上で、ESGの要素を投資プロセスに組み入れることは不可欠と捉えている。ESGを組み込んだ代表的な海外商品「グローバル株式インパクト戦略」の運用成績は、年率約3%で成長している。

 アクティブ投資が中心で、業界ごとや企業ごとにESGの取り組みを評価している。鉱物採掘に関係する企業は環境面を重要視するし、途上国に工場を構える企業などは社会面を重視する。株式と債券については、こうした評価をした上で投資をするかどうかを決めている。

 全世界の運用担当者は約1000人いる。株式や債券などの資産別にESG担当者を置いていて、それとは別にESGを専門に見るチームを1992年から設けている。ESG専門チームは世界に約20人を配置しており、全世界の運用担当者に最新情報の提供や助言などをしている。

――欧州と日本で、ESG投資に関する取り組みに違いはあるか。

スティアリング 欧州では、地球温暖化を喫緊の課題として認識する投資家が増えている。ESGの取り組みが企業のリスクを抑え、中長期のリターンにつながるという認識が、生命保険会社などの大手機関投資家に広がりつつある。

 日本企業はガバナンスの取り組みが、ここ2年間くらいで大きく進展している。ガバナンスというと大企業の不祥事が注目されるが、こうした問題は日本だけではない。

性別や国籍の多様性は不可欠

――日本企業に求めることは。

スティアリング 中長期の視点で投資するので、企業との関係も中長期になる。取締役会のメンバーとの対話からESGに関するリスクと機会を見つけていくことで、リターンの向上を働きかける。企業側もこうした役割を我々に期待している。

 欧州では取締役会の半数以上を社外取締役にしている企業が多い。この点で日本企業はまだ遅れている。社外取締役は、潜在的な顧客を探ったり、サプライチェーンのリスクを見つけたり、企業内の人間には分からない視点を提供してくれる。

 取締役会のダイバーシティー(多様性)も重要だ。性別や国籍などに偏りのある取締役会は、グローバルで中長期に発展できるとは思えない。性別や国籍だけでなく、年齢や世代にも注目している。若い世代の方が新しい技術を使いこなしており、柔軟な発想も出やすい。

 女性や国籍などの「外見」ではなく、スキルや経験などの「中身」が重要だと主張する企業もある。こうした企業は、結果的に多様性を強みにできていないケースが多い。性別や出身地域などの多様性はやはり重要だ。取締役会だけでなく役員や従業員も同じだ。毎年、企業との対話でダイバーシティーの進展を問う。