半澤 智

株主総会に遠隔参加する「バーチャル株主総会」を開催する企業が出てきた。実践に当たっては、質問、動議、議決権行使の3つの扱いがポイントになる。

 企業が株主総会の新型コロナウイルス対策に追われている。資生堂は2020年3月25日、例年より座席の間隔を広く取り、株主総会の様子を中継する別室を用意した。カゴメは3月27日、お土産の手渡しをやめ、経営陣との交流イベントも中止した。1年で最も開催が集中する6月の株主総会にも大きな影響を与えそうだ。

 こうした中、インターネットなどを活用して遠隔から株主総会に参加する「バーチャル株主総会」に注目が集まっている。米国では実施企業が年々増えており、米ブロードリッジの調査では、2018年に285社がバーチャル株主総会を実施している。

 新型コロナウイルスの影響拡大を受けて米証券取引委員会は3月13日、バーチャル株主総会を認める指針を発表した。毎年4万人以上を集めて株主総会を開催するウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイも、5月2日の株主総会は物理的な出席は許可せず、ライブ配信にすると発表した。

 企業の株式業務に詳しい東京株式懇話会の井上卓会長は、「新型コロナウイルス対策としてバーチャル株主総会を検討する機運が、世界で加速するだろう」と話す。

メッセージ受け付け「対話」

 日本の会社法では、株主総会を招集するに当たり、株主総会の「場所」を定めなければならないとされている。そこで経済産業省は2020年2月26日、会場参加と遠隔参加を合わせた「ハイブリッド型」の株主総会を開催する際の法的解釈を整理した「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を公開した。

 ガイドでは、「参加型」と「出席型」の2つを定めている。

 参加型は、遠隔にいる株主がインターネットなどを通じてライブ配信を傍聴する形態である。議決権は事前に行使しておく。会社法で株主に認められている「動議」と「質問」はできない。

 この参加型の株主総会を2019年9月に実践したのがグリーだ。ライブ配信サービスを提供するJストリームのサービスを利用し、約30人の株主が遠隔から参加した。

株主総会の様子をライブ配信したグリー。左は、遠隔にいる株主が閲覧する画面。株主からメッセージを受け付けた
(写真:グリー)
[クリックすると拡大した画像が開きます]
株主総会当日の事務局の様子。株主からのメッセージを管理し、議長を務める田中良和社長のモニターに映す(写真:グリー)

 工夫したのは、会社法上の「質問」ではなく、「メッセージ」という形で株主の声を受け付けた点である。ライブ配信画面にメッセージ入力欄を設け、株主からメッセージを募った。総会中に3件が寄せられ、議長を務めた田中良和社長をはじめ壇上の取締役が回答した。メッセージと回答は株主総会終了後、同社のウェブサイトでも公開した。

 法務総務部組織法務総務グループの松村真弓シニアマネージャーは、「メッセージの受け付けは対話の促進につながり、経営の新たな気付きにもなった」と評価する。この取り組みを、株主の満足度向上と、新たな株主の獲得につなげたい考えだ。