「質問」「動議」をどうするか
もう1つの「出席型」は、遠隔にいる株主に会場出席の株主と同様の環境を整備し、株主総会に「出席」したと見なす方法である。2020年3月13日にこの方法を採用したのが富士ソフトだ。株主総会に出席した170人のうち、11人が遠隔から出席した。
株主総会の会場では、出席した株主にタブレット端末を配布。遠隔出席を希望する株主は、指定のアプリケーションをインストールしてもらう。株主総会では、会場のタブレット端末と同じ画面が、遠隔にいる株主の端末にも映し出される。議決権行使もタブレット端末で操作する。結果はインターネット回線を通じて集計され、画面に表示される。

最終的に導入を決めたのは、株主総会の2週間前だった。新井世東・取締役専務執行役員は、「株主が増える中、少しでも多くの株主に自社の取り組みを知ってもらうため、導入を決断した」と話す。同社は取締役会をはじめ社内会議で自社のペーパーレス会議システム「モアノート」を利用している。このシステムを株主総会で採用できると考えた。
悩んだのが、質問と動議の扱いだ。会場の株主と同様の環境を遠隔の株主に提供するにはどうすればいいか。そこで、小規模のコールセンターを構築し、株主質問は当日に電話で受け付ける体制を整えた。動議の提出は会場出席の株主に限定し、その旨を招集通知に記載した。

最大の懸念は、通信障害が発生した場合だ。招集通知には、障害リスクがあることを明示し、採決に参加できなかった株主は「棄権」として扱うことにした。当日は、コールセンターで障害相談も受け付け、会場にもタブレット端末の操作を説明する人材を約10人配置した。こうした準備の下、株主総会当日は、出席した全ての株主が投票したことを確認してから結果を公表した。
大規模開催や海外対応など、課題は残されている。ただ、バーチャル株主総会は、株主に経営参加の機会を与え、対話を深めるきっかけになる。新型コロナウイルス対策はもとより、ESG経営をアピールする場として活用すべきだ。