半澤 智
中国に拠点を構える日本企業は今回、どのような対応を取ったのか。抽象的な計画やリモートアクセスの不備など、課題が浮かび上がった。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、中国に拠点を構える日本企業はどのような影響を受けたのか。PwC Japanグループは、2020年2月10日から21日にかけて現地の日本企業337社に緊急ヒアリングを実施した。
回答企業218社のうち、事前に事業継続計画(BCP)を策定していた企業は72%だった。このうち、「有効に働かなかった」と回答したのは全体の32%で、もともと「策定されていなかった」と答えた28%と合わせると、60%の企業でBCPが有効に機能しなかった。
BCPが機能しなかった理由としては、「今回の事態がBCP策定時の想定をはるかに超えていた」「BCPが本社視点で策定されており中国拠点の視点が抜けていた」「計画の記載が漠然とした基本方針にとどまっており具体的な手順が記されていなかった」などの声が上がった。
BCPの基本方針を定める企業は多い。しかし、感染症を想定していなかったり、海外拠点を網羅していなかったりする場合、今回のケースでは役に立たない。緊急時の具体的な連絡先やワークフローを定め、普段の周知と訓練が欠かせない。
初動対応は、「社員へのマスクや消毒薬の配布」が88%で最も多かった。日本の本社や世界各地の拠点から中国拠点にマスクを送った企業が多い。マスク以外には、体温計、ゴーグル、防護服の確保に努めた企業もあった。