コロナ対策で導入加速

 日本の会社法では、株主総会は「場所」を定めた上で開催する必要がある。そのため、会場参加と遠隔参加を組み合わせた「ハイブリッド型」となる。東京証券取引所が3月期決算企業に実施した「定時株主総会調査」によると、20年4月6日までに回答した726社の7%が、ハイブリッド型バーチャル株主総会について「実施を検討している」と答えた。

 バーチャル株主総会の導入が進んでいるのが米国だ。バーチャル株主総会の運用サービスを提供する米ブロードリッジ・ファイナンシャル・ソリューションズによると、19年に326社がバーチャル株主総会を実施した。米フォード・モーター、米ヒューレット・パッカード、米マイクロソフトなどが採用している。

■ 米国におけるバーチャル株主総会の開催企業の推移
米国でバーチャル株主総会を採用する企業が増えている。上のグラフは、遠隔参加のみの「バーチャルオンリー型」と、会場参加と遠隔参加を組み合わせた「ハイブリッド型」の合計の数
(出所:米ブロードリッジ・ファイナンシャル・ソリューションズ)

 日本との違いは、会場を設定せずにオンラインのみで議事を進行する「バーチャルオンリー型」を採用する企業が92%を占めている点だ。総会会場は設けず、株主による質問、動議、議決権行使など、全てインターネットを介して実施する。これまでは州によって対応が異なっていたが、米証券取引委員会は20年3月13日、新型コロナウイルスの影響を受けてバーチャル株主総会を認める指針を発表した。カナダやドイツなどでも同様の動きが広がっている。

投資家は「対話排除」に懸念

 一方、こうした動きに否定的な反応を示す投資家も出ている。米カリフォルニア州職員退職年金基金やカリフォルニア州教職員退職年金基金は、バーチャルオンリー型への反対意見を表明している。大手議決権行使助言会社の米グラス・ルイスも、バーチャルオンリー型を計画し、効果的な実施方法を開示していない企業に対して、取締役の選任に反対を推奨すると表明した。

 投資家が反対する理由は、バーチャル株主総会はアクティビストなどの主張を経営者が意図的に排除できる、企業にとって「都合の良い」システムになり得るからだ。株主が経営者や取締役と対面する機会をなくすことは、対話の機会を排除することにつながりかねない。株主質問の意図的な選別や、動議の無視などにつながる可能性もある。

 こうした懸念があるのは、日本のハイブリッド型の株主総会も同じ。バーチャル化によって、株主との対話を軽視した“シャンシャン総会”が増えれば、株主に経営参加の機会を広げ、株主との対話を深めることで企業価値を上げるという、本来の目的と逆行する。経営者が株主と向き合い、自らの言葉で説明する意識があるかどうかが問われている。