国際競争は既に始まっている

 今回のCOVID-19への危機対応は、各国が共通の問題を出されて一斉に解いている状況とも言える。各国の政策の比較研究を通じて、日本の強みと弱みがよく理解できるかもしれない。08年の金融危機とは異なり、金融部門に資金を注入するだけで今回の問題が解決することはあり得ない。まずは、足元の医療、経済、財政などに関連する緊急対応だが、次代に不可欠な公衆衛生や災害医療など健康危機管理に関する公共サービスに投資し、グローバルな協調システムを構築するための契機としなければならない。

 逆説的だが、COVID-19の危機が起ころうが起こるまいが、既に大変革が動き出していた点を看過してはならない。ESG投資の主流化は欧州主導で進められたグローバル・ゲームと言ってよい。情報プラットフォームやサイバー関連では米中が覇権を争い、貿易戦争と言われるまでにエスカレートしている。悲しいかな、持続可能な開発目標(SDGs)の「誰一人取り残さない」やステークホルダー資本主義などの高尚な理念は名ばかりだった。

 アフター・コロナのゲームは、欧米にCOVID-19の影響が波及し始めた20年3月中旬から既に始まっている。詳細は開示できないが、私が関わるいくつかの国際機関では、以下のような事項で動きがある。

 「パンデミックや気候変動リスクを踏まえたサプライチェーンの再編」「安全保障を踏まえたグローバル企業の自国内回帰」「国家緊急事態時における各種規制、個人情報活用の標準化モデル」「食料安全保障確保のための少数国間協調」「EU解体シナリオにおける米中関与」「都市の再構築:5G/6G化や高齢化社会を前提とした公衆衛生重視型スマートコミュニティ」─などだ。

 各国政府やグローバル企業がしのぎを削り、自国の政策や自社の技術などを売り込んでいる。

 金融の動きも目を向けておこう。国際資本市場協会(ICMA)は20年3月31日、ソーシャルボンドとサステナビリティボンドの資金使途としてCOVID-19危機に関するプロジェクトが認められると発表した。例えばワクチン研究開発、医療機器や衛生用品の製造設備への投資、失業緩和のためのプロジェクト、救済のための中小企業ローンなど幅広く資金使途になり得る。

 アフター・コロナを見据えた市場開拓の動きは、ESG、SDGsのロジックと矛盾しない形で国レベルでも民間レベルでも既に始まっている。ただ、国際競争というゲームが存在することも冷徹な事実である。

 ESGの切り口から、日本が得意とする協調領域をつくり出し、COVID-19をはじめとするグローバル・リスクに対し予防・適応するための非財務資本の蓄積や長期の投資に向かう契機になることを信じたい。

蛭間 芳樹(ひるま・よしき)氏
日本政策投資銀行サステナビリティ企画部BCM格付主幹 兼 経営企画部調査役。世界経済フォーラム(WEF)ヤング・グローバル・リーダー 兼 グローバル・リスク研究メンバーを務める