システミック・リスク対応

 次に「G」。つまり「良き企業市民(Good corporate citizenship)」だ。もちろん最高経営責任者(CEO)の皆さんがせっけんを買いだめすることはないだろう。

 しかし、もしかすると企業として回転信用枠(一定の期間や融資枠内で借り手が借り入れや返済を自由にできる融資の形態)を使い果たそうとしていないだろうか。みんなが一度にそうすれば、銀行の資金は枯渇する。

■ コロナショックに対応するESGとは

 回転信用枠を限度まで使い切ることは、せっけんで手を洗うのと同じように、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)による資金繰り破綻の予防策だと思われるかもしれない(これを行う決定をしたのが米業者給食大手のアラマークだ)。

 しかし銀行は、連邦破産法第11条(日本の民事再生法に相当)の下で破産した企業に対しては、事業継続のためにDIPファイナンス(破産後も経営陣がとどまる企業への融資)を、いわば「人工呼吸器」として提供しなければならなくなることを忘れてはならない。

 CEOの皆さんには、これについては「御社が新たに生み出すCO2排出量」と捉えていただきたい。地球資源は大切にしよう。

 あなたがお金を吸い上げるたびにシステムは弱体化していく。せっけんや防護マスクは異なるサプライチェーンから成っているが、融資の方は好況の時期に実際に必要になることはないだろうと見込んで信用枠の3%への拡大を快諾した銀行に集中している。

 回転融資枠での借り入れの発表は、決して短いプレスリリースで済ませず、休業中にも従業員に給与が支払われることも併せて投資家に告知すべきだ(この点は米アパレル大手のエル・ブランズはうまくやった。ただし、既に10億ドル超の負債があったことを指摘しておくが*4)。

 これは当社としての最新の提案内容であった「経営陣の刷新」と「省エネ目標の透明性の確保」とは確かに趣が違うかもしれない。もちろん経営陣の刷新なども実現していただきたい。しかし、Covid-19を乗り切ったあかつきに「買い」のリストを作る際、私としては御社が緊急事態の下でこちらのESGに関してどんな行動を取られたかも反映することになるだろう。

 ぜひ頑張っていただきたい。

Ellen Carr ©Financial Times. Ltd. 2020 Mar 25

*4 2020年3月17日、総額10億ドルの回転信用枠のうち9億5000万ドルを引き出し20億ドル以上の現金を確保したと発表。同時に店舗の一時閉鎖と従業員への給与、福利厚生の提供継続を表明した