聞き手/藤田香

企業がコロナ危機への対応に追われる中、世界の機関投資家が相次いで声明を発表した。代表的な投資家連合である国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)のケリー・ワリング事務局長に狙いを聞いた。

――ICGNは2020年4月末、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、企業や投資家が優先すべきガバナンスの項目を示した声明を発表し、企業に書簡を送った。

国際コーポレートガバナンス・ネットワーク(ICGN)事務局長 ケリー・ワリング 氏
(写真:中島 正之)

ケリー・ワリング氏(以下、ワリング) 新型コロナは企業に連鎖的なリスクをもたらした。企業は従業員や株主、その他の利害関係者のニーズのバランスを取りながら、適切な資本配分を決定する必要がある。

 ICGNは総額54兆ドルを運用する世界の機関投資家のネットワークだ。企業が刻々と変化する状況を管理しながら事業継続性を確保するためにどんな対策を講じているかを知りたいと思っている。共に危機を乗り越えるために、企業との対話を強化したい。「新時代のガバナンス対話」が必要と考え、声明を出した。

――「会的責任」「役員報酬」「配当」「資金調達」「株主総会と取締役選任」「企業報告」の6項目について指針を示した。

ワリング まずは社会的責任と報酬だ。企業は正社員と下請けを含む全従業員の健康を確保するため、労働力を公平に扱うべきである。社会保障制度が弱い国では、できるだけ失業者を増やさない対策が必要だ。所得の低いパートタイムの女性労働者には特に配慮してほしい。

 多くの企業で、役員の給与引き下げや役員賞与の支給の有無も議題になっている。従業員の解雇や給与の削減、賞与支給の見送りを余儀なくされた企業にとって、この問題は特に重要だ。役員報酬問題に取り組まない企業は、信頼を失い、給与が不平等だという評判リスクに直面することになるだろう。

――資金調達に関する指針も出した。

ワリング 企業の中には、事業継続のための追加的資金を調達するため、増資を検討しているところもあるだろう。我々投資家は、彼らが効率的に資金を調達する必要性を理解しているが、株主に新株の優先権を提供し、株式の希薄化を最小限に抑えることを強く求めている。

――自社株買いはどう評価するか。

ワリング 慎重に行う自社株買いは、合法で有用な資本管理の方法だ。投資家は、個々の企業のビジネスや財務的リスクに即して、自社株買いを慎重に評価している。自己資本の妥当性や支払い能力を評価し、資本配分が適正であるかどうかを精査している。