TCFDとSBT対応が後押し
気候変動の質問書は日本企業500社に送られ、回答率は63%だった。Aの企業は19年の20社から38社に倍増した。Aを得るには、気候変動課題に取締役レベルで対応し、SBT(科学に基づく削減目標)認定の取得など野心的な目標の設定が必要だ。温室効果ガス排出量の削減率も4%以上が求められる。「Aの企業の増加はTCFDの開示項目に日本企業が真剣に取り組んだ成果」とCDP Worldwide-Japanの森澤充世ジャパンディレクターは話す。

今回、回答企業の53%がシナリオ分析を実施し、2年以内に実施する企業も含めると87%に上った。SBTを設定済み、または2年以内に設定する企業は85%に達する。

水セキュリティでは320社に質問書を送り、回答率は61%。回答企業の78%は水に関する方針を策定し、87%が取締役会で監督している。水リスクを評価する企業は91%に上るが、バリューチェーンまで含めて評価しているのは34%にとどまる。「水リスクは地域で違う。今後は地域性も考慮した目標設定が必要」と分析に当たったKPMGあずさサステナビリティ代表取締役の斎藤和彦氏は助言する。

森林の質問書は木材、パーム油、畜牛、大豆のサプライチェーンに関わる152社に送られた。回答率は28%と気候変動や水に比べて極めて低い。上記の鉱業セクター向け質問書の回答も世界200社のうち11社だった。そうした中でも、取締役会で森林課題を監督している日本企業は81%ある。森林課題を役員報酬に結び付ける企業も19社あり、今後2年以内の導入を検討する企業と合わせると96%に上る。
トレーサビリティーを確保する企業は木材が77%、大豆が82%と19年の約60%から向上した。「自社以外にステークホルダーの森林リスクも見る企業が増えた。考慮する要素や対象が着実に広がっている」と結果を分析したQUICKは指摘する。

責任投資原則(PRI)は森林破壊防止の協働エンゲージメントを始めている。森林への投資家の評価は今後も厳しくなりそうだ。