酒井 耕一

世界でESG投資が広がる中、注目銘柄を紹介する。米国では遠隔医療のベンチャーが急成長している。

 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、世界の優良企業が株価を下げる中で、株価を急騰させている米国企業がある。パソコンやタブレットを通した遠隔医療サービスを手掛けるテラドック・ヘルス(本社ニューヨーク市)だ。

 2020年5月15日には株価が184ドルに達し、1月2日の83ドルから2倍超となった。同時に15年にニューヨーク証券取引所に上場してからの最高値を記録した。時価総額は137億ドル(約1兆5000万円)を誇る。

 投資家の期待を高めている理由は明快。新型コロナウイルスの感染拡大で、通院を避けて同社の遠隔医療サービスを利用する患者が増えているためだ。20年1-3月期には600万人の新規の顧客を獲得した。すでに同社は米国に6200万人の会員を持つが、同期間に200万人がサービスを通して受診し、うち60%は初めての活用だったという。同社のジェイソン・ゴアビックCEO(最高経営責任者)は「18歳から30歳の若い世代の受診が増えている」と明かす。

保険会社や企業と提携し、米国で6200万人の会員を持つ
(写真:テラドック・ヘルス)

 同社は08年から遠隔医療に本格参入したベンチャー企業。保険会社や企業と提携することで、会員を増やしてきた。契約する保険会社はAIGグループやAXAなど70社、サービスを受けられる病院は4000を数える。患者には年中無休で対応する。

 新型コロナの影響を受けて、売上高も急増し、20年1-3月期は1億8100万ドル(約200億円)と前年同期比で41%増となった。純損益は290万ドル(約31億円)の赤字(前年比7%減)。20年の年間売上高は、約8億ドル(約880億円)と、前年比で45%増を見込む。

メンタルヘルスにも注力

 テラドックが、メンタルヘルス分野に力を入れている点も評価が高い。医師や心理学者、カウンセラーらとのネットワークを持ち、患者とのセッション(診療・対話)を通算で3300万回こなしてきた。

 遠隔医療はITツールを使うため、患者と医師を円滑に映像でつなぐテクノロジーが重要要素と見られることが多い。だがゴアビックCEOは「多くの医師のネットワークを築いて、患者に信頼して利用してもらうことが大切」と強調する。

 テラドックは海外市場にも手を打つ。20年4月にはフランスの同業ですでに資本提携しているメディシン・ダイレクトに1100万ドル(約12億円)を追加出資して、完全買収した。「欧州の市場拡大には特に力を入れる」(ゴアビックCEO)。

 日本でも遠隔医療への規制緩和が徐々に進むが、海外では市場拡大のスピードが急速に増している。