半澤 智
個人投資家の声を束ね、企業との対話によって株価の向上を目指す。企業に物言うアクティビスト活動が、個人投資家に広がりつつある。
マネックス証券は、2020年6月25日から公募投資信託「マネックス・アクティビスト・ファンド」の運用を開始した。個人投資家の声を集め、企業との対話(エンゲージメント)によって投資リターンの拡大を図るユニークな取り組みを実践する。マネックスグループの松本大会長は、6月10日に開催した動画配信のセミナーで、「個人投資家の声を経営者に届け、日本企業を変えていく。これはアクティビズム2.0だ」と意気込みを語った。

(写真:ロイター/アフロ)
個人投資家(個人株主)の数は増加傾向にある。特に直近の5年間の延べ人数は約900万人増え、急拡大している。14年に始まった少額投資非課税制度(NISA)の利用者が拡大しており、最近ではスマートフォンを使った株式投資も進み、幅広い年代の個人投資家が増えている。
個人投資家は機関投資家と違い、企業の経営陣に意見を伝える機会が限られる。唯一の手段と言えるのが株主総会の株主質問だが、それをもって経営者を動かすのは難しい。
「マネックス・アクティビスト・ファンド」はそこに目を付けた。個人投資家の声を束ね、マネックス証券が代表してその声を企業にぶつける。「株式数」ではなく「株主数」を武器にして企業に変革を迫るという点では、従来にない新しい取り組みだ。アクティビスト活動が個人投資家に広がる可能性を秘めている。
銘柄選定に当たっては、厳選した10〜20の企業を予定しており、その際、ESGの視点も重視するという。銘柄選定やエンゲージメントなどの戦略立案は、マネックスグループ傘下のカタリスト投資顧問が担う。リターン向上につながるエンゲージメントをどのように実践するのか。同社の平野太郎社長と小野塚惠美副社長に聞いた。